2000 Fiscal Year Annual Research Report
ヒルギ類の胎生発芽を可能にする塩類を含んだ種衣の研究
Project/Area Number |
12640653
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
高相 徳志郎 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (50295341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸部 博 京都大学, 理学研究科, 教授 (60089604)
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Keywords | 耐塩性 / 胎生発芽 / 胚 / ヒルギ / マングローブ植物 |
Research Abstract |
胎生発芽はマングローブ植物に、ほぼ限定して見られる特徴であるが、なぜ汽水域を生育の場とするマングローブ植物にこの特徴が限定的に生じるかの説明は未だにされていない。これを説明のための基礎資料として、今研究では、ヤエヤマヒルギを材料に、胚の生長期における胚、胚乳、種皮、果皮の形態的特徴を報告することを主要な目的とした。形態解析は機能を理解する上で極めて情報を提供してくれるからで、とりわけ透過電子顕微鏡による細胞の内部構造の観察が有益である。初年度の結果として以下の結果が得られた。 胚は生長初期では胚乳の細胞崩壊によって生じた溶液を、後期では種皮の細胞崩壊によって生じた溶液を養分として生長する。また、胚乳細胞は、種皮と果皮細胞の崩壊による溶液を養分として生長する。これらの溶液には養分以外に、生長に悪影響を及ぼす物質が含まれると考えられ、この影響は胚と胚乳両組織の表層細胞の細胞膜と細胞質の活動によって克服されると推測される。更に、胚では、この悪影響が表層細胞壁内に形成される特別な構造(電子染色されない薄層)、胚乳では胚乳表皮の厚い細胞壁で緩和されるようである。胚と胚乳の表皮細胞ではゴルジ体が活発に活動し、形成された袋(ベシクル)が細胞膜を供給し、あわせて細胞壁の構成要素を分泌する(エクソサイトーシス)。養分を含んだ液は細胞膜の陥入によって細胞内に取り込まれる(エンドサイトーシス)。今後、果実各組織の塩類濃度の変化を測定し、形態変化との関連を明らかにする。
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