2001 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアゲノム全塩基配列を用いた有鱗類の高次系統関係の解明
Project/Area Number |
12640680
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
熊沢 慶伯 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 講師 (60221941)
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Keywords | 爬虫類 / mtDNA / 分子系統学 / トカゲ亜目 / ヘビ亜目 / メクラヘビ / 系統進化 / 高次分類 |
Research Abstract |
この研究の当初の目標は、有鱗類6ー7科の代表種についてmtDNAの全塩基配列を決定し、a)トカゲ亜目内における4つの下目間の系統関係、b)トカゲ類内におけるヘビ類とミミズトカゲ類の位置づけ、c)メクラヘビ類の系統的位置づけ、を解明することであった。我々は、mtDNA塩基配列を様々な爬虫類から決定する方法論の改良に取り組んだ結果、予定した以上のペースでmtDNA解読を行うことができた。現在までに11科の有鱗類(爬虫類全体では15科)からmtDNA全塩基配列を決定している。トカゲ類mtDNAは、一部の科の代表種を除き、いわゆる典型的な遺伝子配置を持つことが分かったが、多くのタクサで制御領域の中に、他に類を見ないほど高頻度な繰り返し配列が見られた。分子系統解析を行った結果、1)イグアナ下目は有鱗類の初期派生系統ではないこと、2)ヘビ類はトカゲ類の中のオオトカゲ類に近いグループから派生したこと、3)メクラヘビ類は他のヘビ類と独立に派生した系統ではないこと、などが強く示唆された。過去の分岐分類学的研究では、イグアナ下目の初期派生に対して数多くの共有派生形質が示されており、我々の発見は爬虫類の高次系統関係を分子的観点から検証することの重要性をますます際だたせることになった。また、トカゲ亜目は形態学的見地から従来4つの下目に分類されてきたが、本研究を行った結果、こうした基本的な分類すら成立しない可能性が出てきている。今後はこの点をはっきりさせるために、トカゲ亜目の全科から代表種のmtDNA配列を決定し、分子系統解析を行う予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Kumazawa, Y.: "Molecular clock estimation in fishes and Its application to blogeographical studies"Proceedings of the International commemorative symposium for 70th Anniversary of the Japanese. (in press).
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[Publications] 熊 澤 慶 伯: "アロワナ淡水魚類のプレートテクトニクスによる大陸移動;分子時計と地質データの総合による新しい生物進化像の構築"月刊地球. 22(3). 208-214 (2001)