2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12650018
|
Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
根岸 利一郎 埼玉工業大学, 先端科学研究所, 研究員 (70237808)
|
Keywords | X線動力学回折 / 共鳴散乱 / X線トポグラフ / 放射光 / 構造評価 / 半導体 |
Research Abstract |
当研究の目的は共鳴散乱を伴うX線動力学回折に特徴的なBorrmann効果を利用することによって結晶中のミクロな欠陥や格子歪みによって観測されるロッキッグカーブや,トポグラフのコントラストの変化から結晶の構造評価法の基礎を解明しようとするものである。 平成12年度は,共鳴散乱を伴うX線動力学回折の特徴を明らかにし,Borrmann効果特有の結果を他の場合と比較するための代表的条件を検討して実験した。この条件はX線分極率のフーリエ係数(実数部はχ_<hr>,虚数部はχ_<hi>)によって表されるu(=(|χ_<hr>|^2-|χ_<hi>|^2)/(|χ_<hr>|^2+|χ_<hi>|^2))とν(=(1-u^2)^<1/2>cosδ,δはχ_<hr>とχ_<hi>の位相差)によって特徴づけられ,それらの値はエネルギー変化に伴って変化する。ここで選んだ共鳴散乱の状態を特徴付けるu,νの値の代表的4点は(1)トムソン散乱だけでBorrmann効果の生じないχ_<hi>=0,χ_<hr>=0でのu-1,(2)共鳴散乱だけでBorrmann効果の最も著しいχ_<hi>=0,χ_<hr>=0でのu=-1,(3)中間の|χ_<hr>|=|χ_<hi>|でu=0,ν=-1(δ=π)そして(4)u=0,ν=1(δ=0)である。この4点はGaAs200反射においては(1)10.368keV,(2)11.343keV,(3)10.502keVそして(4)11.805keV付近のエネルギーで実現されるので,KEK-PFの放射光を利用して撮影した。 GaAsの試料結晶は研磨機によって133mmに薄くしたものを使用した。実験の結果,(1)では従来の欠陥トポグラフと同様にシャープな像が得られ,(2)では欠陥部で異常透過の生じない白くなった(X線が弱くなった)像が得られた。また,(3)と(4)のu=0ではν=-1と0の変化によるコントラストの逆転変化が観測された。これらの結果は従来のトポグラフ像には全く観測されたことのない共鳴散乱に特有な現象である。今後はこれらのu,vの変化によるコントラスト変化を理論的に解析し,Ge844反射をも利用して研究を進める。
|