2000 Fiscal Year Annual Research Report
走査型近接場光学顕微鏡を用いた半導体量子ドットのコヒーレント制御
Project/Area Number |
12650035
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
戸田 泰則 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (00313106)
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Keywords | 近接場光学顕微鏡 / 半導体量子ドット / コヒーレント制御 |
Research Abstract |
ナノメーター空間に電子、正孔を閉じ込めることで実現される半導体量子ドット(QD)は、原子に類似の離散化した電子状態密度を持ち、その電子-正孔対(キャリア)とフォノンの相互作用は他の半導体高次構造と著しく異なることが予測される。例えばキャリアと光学フォノンの相互作用は、光学フォノンの分散特性により著しく抑圧される。しかしながら、キャリアのエネルギーが光学フォノンのエネルギーとちょうど一致する場合は、閉じ込めに起因する相互作用の増強が起こることが理論的に予測されている。本研究の目標は、走査型近接場光学顕微鏡を用いた単一QD分光を通してこのようなQDの新しい物性を探索し、これを時空間に制御された近接場光を使った量子状態制御へと発展させることにある。 本年度の研究成果である近接場パルス列による単一QDの量子干渉の観測を簡潔に記す。パルス波形整形の施された近接場光は、回折格子を用いた光学系で実現される。パルス列の間隔はキャリアの励起時間差に対応しており、ひとつめのパルスで共鳴励起されたキャリアがその位相を保持していれば、二つめのパルスで励起されたキャリアとの間に干渉を生じる。その振幅の減衰から位相緩和が見積もられ、およそ15psであることがわかった。この位相緩和時間は光学フォノンの緩和時間にほぼ対応していると考えられる。すなわちQDキャリアの効率的な緩和は、光学フォノン緩和が支配的であることに起因すると考えられる。次に異なる二つの共鳴を同時に励起することにより、QDの励起緩和過程における量子干渉を観測した。二つの独立した量子状態を一つのパルスで励起することにより、ヤングのスリット実験に類似の量子干渉を観測することが可能となる。その結果、前述の位相緩和に重畳して、共鳴のエネルギー差に相当する干渉信号が得られる。この結果から本研究の目標であるQDにおけるコヒーレント制御の可能性が強く示唆された。
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[Publications] Y.Toda: "Near-field coherent excitation spectroscopy of InGaAs/GaAs self-assembled quantum dots"Applied Physics Letters. 76. 3887-3889 (2000)
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[Publications] Y.Toda: "Near-field spectroscopy of a single InGaAs self-assembled quantum dots"IEEE Journal of Selected Topics in Quantum electronics. 6. 528-530 (2000)
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[Publications] Y.Toda: "Many body effects in single self-assembled quantum dots observed by near-field photoluminescence excitation spectroscopy"Proceedings of International Conference on the Physics of Semiconductors. D. D300-300 (2000)