2001 Fiscal Year Annual Research Report
界面の微細構造と界面エネルギを考慮した薄膜剥離過程の解析と剥離力の逆解析システム
Project/Area Number |
12650075
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
古口 日出男 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (90143693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井原 郁夫 長岡技術科学大学, 工学部, 助教授 (80203280)
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Keywords | 界面 / 界面エネルギ / 薄膜 / 剥離 / 境界要素法 / 界面構造 / 逆解析 |
Research Abstract |
電子部品には薄膜を多層に積層した構造、また機械部品等には耐熱性、耐食性、耐磨耗性を向上するためにコーティングなどの膜構造を施したものが多くある。電子部品あるいは機械部品などに見ることができる多層薄膜構造は、熱・外力の作用により剥離することがある。そこで、本研究では多層薄膜構造における薄膜と基材の接着・接合の解析方法の確立と薄膜が剥離する際に必要な力を逆解析手法により推定することを目的とする。特に、界面の微視的な構造を考慮して、剥離の物理モデルを構築し、剥離力を推定することを目指す。 ミクロに見た場合、剥離と凝着の過程は逆であるが非常に似ている。そこで、剥離のシミュレーションを行うために基板と薄膜との凝着プロセスを境界要素法でシミュレートするプログラムを作成した。この凝着プロセスと同じアルゴリズムを剥離プロセスの解析に用いることにした。分子間力(二面間の距離の関数)を凝着メカニズムに用いる場合、解析アルゴリズムの妥当性を検証する必要がある。凝着についてはJohnson, Kendall, RobertsらのJKR理論が実験と比較されており有効性も確認されている。そこで、本研究で開発したプログラムを用いて球と平面の凝着を解析し、その結果をJKR理論と比較することにより解析アルゴリズムの妥当性を確かめた。その過程を通して分子間力を考慮した解析の困難な点を明らかにした。一般に、分子間力の有効範囲は数オングストロームであることから、解析のための要素寸法は同程度のものとする必要がある。このデータを用意するには多大の労力がかかることから、解析の基礎式およびメッシュ間隔を平衡分子間距離で無次元化し、これを解析に用いることにした。この処理を行うことにより、解析精度の向上と数値の安定性を確保した。また、同じプログラムを用いて剥離解析を行った。その結果、剥離、凝着の両方共に解析が可能となったが、解析に繰り返し計算を行っているため、繰り返し数の増加に伴い安定性の問題が新たに出てきた。 また、剥離実験装置の自動計測システムを試作した。しかし、解析プログラムにおける問題を解決するため、時間を使ってしまったため、十分な実験を行うことができなかった。今回購入した計測機器を用いて電子基板とICの剥離強度の実験を行う。薄膜剥離の計算が高度な非線形性を有しているため逆解析アルゴリズムは難しいがJKR理論などから予測される凝着力-剥離距離の関係から凝着力を求めることができることから、数値解析による同様な関係を導出することで逆解析は可能と考える。
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