Research Abstract |
本年度においては,現在提案されているSubgrid scale(SGS)estimationモデルの数種類の定式化の比較を,Direct numerical simulation(DNS)による厳密解が容易に得られる非圧縮性一様等方性乱流において行い,最も予測精度の高い定式化の選択を行った,第一段階として,最大512×512×512の格子点数による一様等方性乱流のDNSにより,比較の基礎となる厳密解のデータの生成を行った.第二段階として,第一段階で生成したDNSデータを用いて,esimationモデルの予測精度の直接的検証,すなわち,DNSデータのフィルター操作により算出されたSGS応力の厳密値とそのモデルによる予測値との相関の検証('a priori' test)を行った.SGS estimationモデルでは,2倍に拡張された格子上での速度場の見積が必要となるが,補間法により拡張された速度場にNavier-Stokes方程式の非線形項を介して修正を施す過程が肝要となる.本年度は,この修正法の比較を行った.修正法の優劣の決定基準として,見積もられた速度場の予測精度の検証を乱流構造の幾何学的分類の観点から行った.研究代表者により提案された方法[K.Horiuti,submitted to Phys.Fluids(2000)]により速度場の構造を分類し分析した.この方法では,乱流構造は,ストレインと渦度の強度の大小により3つの領域に分類されるが,単純な,非線形項を介した修正を行った場合[J.A.Domaradzki et al.,Phys.Fluids 11(1999)Model 1]では,ストレインが渦度に卓越する領域が過大評価され,渦度が関与する領域が正確に評価されない事を示した.これは,非線形項のみの考慮のため,渦度の形成に関与する圧力項の効果,特に非圧縮性が保持されないことによる.この欠点は,見積もられた速度場を非圧縮の条件を満足する成分への射影を行うこと(Model 2)により解消され,渦度の強度が大きな領域においても予測精度が改善される事を示した.次に,Navier-Stokes方程式のダイナミクスを更に取り入れるために,拡張された格子上で,同方程式を数ステップ時間前進して見積を行う方法を用いたところ(Model 3),更なる改善が得られた.次に,これら3モデルの検証を,SGS生成項の厳密値とモデルによる予測値の相関を対象に行ったところ,上記と整合した結果が得られた.第三段階として,これら3モデルを実際のLES計算に適用して,その予測精度の検証を行った.計算には32×33×32の格子点数を用いたが,結果は上記の'a priori' testと整合しており,特にModel 2と3においては,従来のモデルに比べ予測精度の高い結果が得られた.同様な検証結果は回転乱流においても得られた.本年度は,学術振興会外国人招へい研究者(短期)プログラムのもと,estimationモデルの提案者であるDomaradzki教授が来日され,研究の大きな進展が得られた.ここに記して,謝意を表す.
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