2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12650306
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
深海 龍夫 信州大学, 工学部, 教授 (90021005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
番場 教子 信州大学, 工学部, 助手 (90303445)
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Keywords | 圧電セラミック / 強誘電体 / 相転移 / 散漫相転移 / メゾスコピック現象 / 透明セラミック / 焦電センサ / 表面波 |
Research Abstract |
現在、圧電セラミック材料としては、ペロブスカイト構造を有する強誘電体であるPZT(ジルコンチタン酸鉛)が利用されているが、昨今、環境意識が高まる中で重金属である鉛を含むことが問題視されるようになってきた。そこで、本研究ではニオブ酸リチウム構造を有するタンタル酸リチウム(LT)をベースとしてCaTiO_3を固溶させたセラミックを焼成して圧電性が検出できるかどうかを試みた。その結果、約20%程度までCaTiO_3を加えた試料ではエックス線回折により単相のニオブ酸リチウム構造をとることが確かめられた。 最適の焼成温度はおよそ1250℃で、これより高いとリチウムの分解蒸発で単層構造をとらずまた多孔質のセラミックスしか得られなかった。固溶体とすることで焼結性も改善され、理論密度の98%以上セラミックスも得られた。外観は全くの白色であり、可視領域には吸収がない。そのため、焼結の良好な試料ではワックス状の透明感があり、光学的応用の可能性も考えられるようになった。CaTiO_3を1%入れるとキュリー温度は約15℃低下し、15%固溶させたセラミックスのキュリー温度は450℃近傍にあった。また、CaTiO_3固溶によってキュリー温度での誘電率のピークはなだらかとなり、また周波数に依存するなどメゾスコピック現象に伴う散漫相転移の様相を示した。 誘電率のピークをやや超える温度より直流を印加しながら冷却する、いわゆる電界冷却の方法によって、分極処理を試みた。高温では約6mA/cm^2、低温では900V/mmの電界で処理し径方向振動および厚み振動で圧電応答を確認できた。このことはこの系のセラミックとして始めての観察であると思われる。電気機械結合係数は径方向振動で0.05とPZTと比べると小さいが、この材料は単結晶でもそれほど大きくなく、妥当な値と判断される。キュリー点が高いことから、高温でのセンサーや、また誘電率が100以下と小さいことから電圧モードの焦電効果赤外線センサーなども有望と考えられる。さらに、分極処理したセラミック上にすだれ状電極(IDT)を形成、表面波の励振・検出をこころみこれにも成功した。 これらの成果は結果が得られた時期の関係で、学術誌にはまだ掲載されていないが、日本セラミック協会、電子情報通信学会などで発表し、また、強誘電体応用会議、国際強誘電体会議にも申し込み中であり、次年度には専門学術誌に掲載となるが予想されている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 深海龍夫,横内俊樹,番場教子 他: "タンタル酸リチウム系固溶体セラミックの誘電特性"日本セラミック協会秋季シンポジウム講演予稿集. 13. 42 (2000)
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[Publications] 深海龍夫,横内俊樹,番場教子 他: "タンタル酸リチウム系固溶体セラミックスにおける散漫相転移"電子情報通信学会総合大会予稿集. (発表予定). (2001)