2000 Fiscal Year Annual Research Report
タングステンブロンズ型強誘電体Ba_6Ti_2Nb_8O_<30>配向薄膜の誘電特性
Project/Area Number |
12650326
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
白藤 純嗣 福井工業大学, 工学部, 教授 (70029065)
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Keywords | 強誘電体 / タングステンブロンズ / 自発分極 / MOD / 変形キュリー・ワイス則 |
Research Abstract |
有機金属溶液を焼成結晶化するMOD法を用いたBa_6Ti_2Nb_8O_<30>(BTN)薄膜の作製と、比較のため従来通りの金属酸化物粉末を焼結したセラミックスについての測定とを並行して行った。結果の概要は次のようである。 (1)これまでの炉焼鈍(furnace annealing)処理に替え、赤外ランプイメージ炉による高速熱焼鈍(rapid thermal annealing)処理を行って、MgO、Pt/Si基板上にMOD法によりBTN薄膜の作製を行い、ほぼその処理条件を決めた。また、光学顕微鏡観察の試料として両面研磨MgO基板上へもBTN膜の作製を行った。 (2)セラミックス試料およびそれを一旦溶融固化した多結晶試料の誘電率-温度(ε-T)特性をキュリー・ワイス則で解析した。その結果、溶融固化試料の常誘電性領域のε-T特性は通常のキュリー・ワイス則(1/ε∝(T-Tc))に従うのに対して、セラミックス試料では常-強転移温度のガウス分布を考慮した時に得られる関係1/ε∝(T-To)^2に従うことが分かった。相転移温度のガウス型揺らぎの幅δとして60K以上の大きな値が見積もられた。 (3)分極-電界特性のヒステリシスから見積もったセラミックス試料の自発分極は温度上昇とともに減少し、ε-T特性のピークより20〜30℃低い温度で消失する。これはε-T特性のピークが強誘電性転移に関連していることを裏付けている。また、ヒステリシスから求めた自発分極の値は単結晶での報告値よりかなり小さく、分極反転に寄与している分域が全体の極く一部であることを示唆し、BTNの大きな抗電界が関係している。 (4)相転移温度の揺らぎの大きさは(Pb,La)TiO_3混晶のそれに相当するが、BTNセラミックスでは組成揺らぎが原因とは考えられず、リラクサー特性も観測されないので、内部応力の揺らぎを考慮しなければならないようである。内部応力の存在は粉末試料とセラミックス試料の格子定数の違いから示唆されているが、その揺らぎのついての観測が必要である。
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