Research Abstract |
色知覚のカテゴリー性は,視覚系においても高次機能を反映していると考えられている.こうした高次視覚における色情報表現を探るために,本研究では視覚の高次機能である注意に着目し,注意が色知覚に与える影響から間接的に高次色情報表現を探ることを目的としている.我々の視覚系は外界から絶えず大量の情報に曝されているが、それらすべてを処理しているわけではなく、その一部を選択的に処理していると考えられている.これまでの研究からこうした選択機構に視覚的注意が関与していることが明らかにされている.視覚的注意は,スポットライトのようにある場所に向けられ,その場所にある視覚刺激の処理速度や処理効率を向上させる空間的注意と,色や形など,刺激属性に向けられる特徴的注意に分類される.空間的注意については,これまでの心理物理学的研究によりその時空間特性の詳細が明らかにされつつあるが,一方,特徴的注意については空間的注意の影響もあり観測そのものが難しく,十分な知見が得られているとは言えない.そこで本研究では,特に色に対する特徴的注意の存在と,その特性を明らかにすることを目的とし,空間的注意の影響を軽減するために刺激呈示位置を固定し,時間軸上に分布する色刺激を高速連続呈示させた心理物理実験を行った. 刺激は注視部に呈示される文字とそれを囲む枠から成り,枠の形(4種類)と色(4種類),文字(7種類)がランダムに組み合わされて高速に呈示される(ISI=70-110ms).被験者は形(Shapeサーチタスク)あるいは色(Colorサーチタスク)によって定義された枠(Target枠)に囲まれた文字を答えるよう教示された.Shapeサーチタスクの場合,文字が無彩色の場合と有彩色(枠と同じ4色)の間で正答率に差は見られなかったが(t=2.905,p>0.05),Colorサーチタスクでは明らかに有彩色の文字の場合,正答率が低下した(t=6.276,p<0.01).また,この条件の場合,Target枠の色と同色である文字(同色文字)が,Target枠の直前もしくは同時に呈示されるとその文字の報告頻度を増加させる傾向にあり,正答率に対してTarget枠直前の同色文字は抑制的に,同時の場合には促進的な効果が見られた.この効果は枠と文字がある程度離れた条件においても生じるが,Target枠を複数の色で定義した場合には見られなかった. したがって,人間は時間的に連続呈示された刺激に対して,ある程度狭い範囲の色と,ある程度広い範囲の位置に対して注意を向けることができると考える.こうした注意の影響が色空間のある範囲に限定されていることは,高次視覚系において色が局所的に表現されていることを示唆するものと考えられる.その性質をより詳しく調べることで,注意の影響を考慮した色彩画像評価が可能になるものと期待される.
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