2002 Fiscal Year Annual Research Report
ライフサイクルコストを考慮したコンクリート構造物のメンテナンスシステムの研究
Project/Area Number |
12650462
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
関 博 早稲田大学, 理工学部, 教授 (40120919)
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Keywords | 塩害 / 期待費用最小の法則 / LCC算定システム / エキスパートシステム |
Research Abstract |
コンクリート構造物は従来はメンテナンスフリーと考えられてきたが、各種の原因(塩害、アルカリ骨材反応、中性化、凍害など)によって劣化を生じ所要の期間その機能を保持し有効に公共の用に活用されるためには、構造物のメンテナンスが不可欠と考えられるようになった。構造物の建設後に供用される環境において性能の変化を生ずるときに、性能変化を最小限にとどめる有効な方策は、適宜点検を実施し適切の管理運営を実施することである。従来は、コンクリート構造物の性能低下に対しては、機能更新による性能強化、撤去などの方法が取られる例も多くみられたが、環境への負荷を低減するために可能な限り既設施設の撤去を避け、資源の有効利用の観点からも既設施設の長期間の活用を前提とすることが必要であり、構造物のメンテナンスの重要性は今後益々高まると考えられる。 構造物を所用期間、活用するためには供用期間における所要コストを考慮する必要がある。これらは、初期投資(建設)費用、維持管理のための費用、撤去、更新費用などである。今回対象としている構造物としては、塩分環境にある鉄筋コンクリート構造物である。昨年度までは、鉄筋の腐食によるひび割れ発生と破壊確率、ライフサイクルコストの現在価値の換算方法、信頼性理論の基づく期待費用最小の理論からの最適な補修時期の定め方などを求め、ライフサイクルコスト算定におけるパラメーターの感度解析を実施した。今年度は、これらの成果をすべて含めて、LCC算定において劣化予測に必要なデータと各費用を入力することによって、対象構造物の評価を迅速に算定し効率的にコスト管理を行うシステムを開発することとした。すなわち、エキスパートシステムを応用して初心者が容易に最適補修時期と補修工法を選定するシステムを構築した。PCの入力画面に、劣化予測パラメーター、補修工法のコスト、資本の利率などをインプットすることにより、LCCの数値や経年による支出、補修工法比較などの数値や図面を短時間でアウトプットできるシステムである。なお、利用に当たってそれぞれの数値を的確にインプットすることが困難なときには標準的な数値を提示しており、容易に最終的な成果物を得ることが可能なように利便を図っている。
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[Publications] 高橋 稔明, 酒井 通孝, 関 博, 松島 学: "海岸環境におけるRC構造物のLCC算定による補修工法および補修時期選定システムの開発"コンクリート工学年次論文集. Vol.25, No.1(未定). (2003)
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[Publications] 伊庭 孝充, 松島 学, 関 博, 川田 秀夫: "塩害を受けるRC構造物のライフサイクルコスト算定手法に関する基礎的研究"土木学会論文集. No.704, V-55. 1-11 (2002)