Research Abstract |
都市域の合流式下水道では,雨天時,しばしば,下水処理場の処理能力を上回る多量の汚濁雨水が流出し,処理されないまま,下流域の河川,湖沼へと排水されている.また,分流式下水道においても,雨水は直ちに下流域へと排水されるため,特に,降雨初期には,高濃度の汚濁雨水が,必然的に,処理されないまま,河川,湖沼へと流出している.こうした汚濁雨水の未処理排水(越流水)は,明らかに,都市域を抱える河川,湖沼,内湾などの公共用水域において近年顕在化している水質悪化の原因の一つと考えられ,この排水問題の早期解決(越流水対策の早期確立)が切望されているところである. 本研究では,現在,供用されている下水道管渠網の各下水管渠内には,特に中小の降雨時,広い空間(余裕)が存在していることに着目し,幾つかのゲートを設置して降雨時それらを操作し,管渠網内に広く汚濁雨水を貯留すると共に,降雨中および降雨終了後,この貯留された汚濁雨水の中から,処理能力に見合うだけの汚濁雨水を下水処理場に送り続け,数日以内には,これら汚濁雨水を全て処理して放流することにより,越流現象をほとんど発生させない越流水対策について検討を進め,以下の結果を得た.(1)はじめに,状態変数を堆積固形性有機物,溶解性有機物,有機酸発酵細菌,硫酸イオン,硫化水素,硫酸還元細菌,硫黄酸化の各過程とし,反応過程を固形性有機物の可溶化,有機酸発酵,硫酸還元,硫黄酸化細菌として,数理モデルを構築し,シミュレーションを試みたところ,下水の数日間の貯留では,下水管渠の腐食を引き起こすまでには至らないことが示された.しかし,酸素の消費とそれによる酸化還元電位の低下は,長期間の貯留においては水質の悪化を引き起こす可能性があり,さらに多くの条件下で動力学定数を求めていく必要があることを明らかにした.(2)次に,この結果をもとに,下水道管渠網内の各所でゲート操作が行われるもとでの汚濁雨水の挙動を正確に再現できると共に,汚濁雨水の下水道管渠網内での貯留による水質変化を精度高く予測できる,越流水対策シミュレーション・モデルを確立した.
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