Research Abstract |
本年度は,先ず米松集成材の金属プレート接合を用いたL型試験体の曲げせん断実験を行い,モーメント抵抗接合の挙動に与える各種要因の分析を行った。その結果を考慮に入れ,集成材の金属プレート接合の力学的挙動に対して大きな影響を持つと考えられる要因の一つである集成材同士のめり込みに関する実験を行った。樹種として,米松集成材に限定し,受圧幅,受圧成,支圧幅,余長,余端を変動要因として52種,156片の回転めり込み実験を行った。 既往の研究では,金属プレートによる等変位めり込みを与えることでめり込み挙動を把握しようとするものが多く,通し貫を用いて回転めり込みを与えた研究もある。しかし,通し貫を用いた方法では,余長および余端に自由度を持たせることは不可能であり,金属プレートを用いた等変位めり込み実験から回転めり込みを類推する研究にとどまっている。そこで本研究では,先ず,上述した変動要因すなわち受圧幅,受圧成,支圧幅,余長,余端を自由に選択でき、且つ表面回転めり込みを与えることのできる加力装置を設計・製作した。本加力装置により,なめらかな回転運動を可能とし,余長・余端を変動させて表面回転めり込みを与える試験を可能とした。 実験の結果より本実験結果と既往の鋼板による均等めり込みとの相違として,均等めり込みでは,有効余長は受圧成の1.0倍と言われているのに対し,木材同士の回転めり込みでは,余長を受圧成の1.5倍に取った時でもなお余長による効果が発揮されている。また、余長と共に受圧成を増すと、塑性剛性は上昇すると言われているが,受圧成の増加に対し塑性剛性は低下する様相が見受けられた。余端に関しては,その増加に対し降伏応力度および降伏回転角の上昇が言われているが,降伏変形角はほぼ一定であることが確認された。 加圧寸法を独立させた実験を行い,更なる実験データの収集を行うことが今後の課題の一つである。接合部のモデル化に当たり,今後は他にドリフトピンと集成材のめり込みに関する基本的実験,座金と集成材のめり込みに関する基本的実験を行う必要がある。これらの基本的実験を行う際には,多様な接合方法に対応すべく,それぞれの基本的実験に対して,各種パラメータを設ける。具体的には,ドリフトピンと集成材のめり込みに関しては,ピン径,めり込み位置のへりあきなど,座金と集成材のめり込みに関しては,座金厚,座金径,座金位置などの予定である。
|