2001 Fiscal Year Annual Research Report
ニューヨーク都市建築史に関する基盤的研究-不動産・社会・メディアからみた-
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12650640
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 毅 東京大学, 工学系研究科, 教授 (20168355)
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Keywords | ニューヨーク / ローワーマンハッタン / 都市形成 / バッテリーパーク / ウォール / ダッチスタイル |
Research Abstract |
今年度は、ローワーマンハッタンの資料調査と専門家からの専門知識の提供を受けるべく、現地調査を予定していたが、9月の同時多発テロのため、ニューヨーク調査を断念せざるをえなかった。急遽予定を変更し、国内で収集しうる資料調査に専念することにした。東京大学に所蔵されているNew York Timesのマイクロフィルムからの検索、京都同志社大学、立命館大学、大阪市立大学の所蔵資料を調査し、その分析を行った。 調査の結果、ローワーマンハツタンの形成については、The Iconography of Manhattan Island(Stolk, 1928)古地図・資料を豊富に収集しており、形成段階として(1)ニューアムステル時代のバッテリーパーク付近の都市形成と都市壁の建設(2)18世紀の都市壁(ウォール)を超えた都市拡張、とくにイーストリバー付近の港湾関連の都市開発、(3)19世紀のソーホー地区、ローワーイースト、ローワーウエストの規則的な街区開発、(4)20世紀のニューヨーク委員会案によるマンハッタン島全域のグリッドプラン、という4段階に整理することができる。 このなかで初期ニューヨークの都市形成の場であったローワーマンハッタンの形態は、具体的資料に欠けるが、古地図の分析と建設年代の判明する建物からの情報を勘案すると、ブロードウェイを先行条件としながら、最初ハドソン川沿いの地区から都市化が進行し、ついでブロードウェイから分岐するいくつかの主要道路沿いに住宅や小規模な商店が建ち並んだと推測される。当初はオランダ移民が多く、ダッチスタイルの切り妻屋根の木造建築が道路沿いに櫛比し、裏は畑や空き地になっていたと考えられる。基本的には道路に規定された線形の都市形成が進行したと判断してよい。ついで、オランダから総督が派遣され、城郭・都市壁の建設が行われるが、それまでに都市壁(現在のウォール街)近くまで都市化の波は及んでいたようだ。当時は主として支配者層の住宅、教会、港湾関係者、小規模な商人、奴隷などが居住しており、素朴な港湾都市としての体裁しか出来上がっていなかった。 18世紀に入るとようやく都市ディベロッパーによる住宅建設がはじまり、初期のダッチスタイルとはことなる住宅類型が成立することになる。これは高密化する都市に適合的な集合住宅のかたちをとって、既存の不整形な街区にはめ込まれてゆく。この段階から線形的な都市組織は姿を消し、街区型の都市への以降がはじまったとみることが可能であろう。
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