2002 Fiscal Year Annual Research Report
ニューヨーク都市建築史に関する基盤的研究-不動産・社会・メディアからみた-
Project/Area Number |
12650640
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 毅 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (20168355)
|
Keywords | ブルックリン / エスニック・グループ / アーバン・エンクレーブ |
Research Abstract |
今年度は、研究地域をマンハッタン郊外のブルックリンに移し、分析を行った。 ブルックリンの形成はマンハッタン島よりやや遅れて、18世紀ころから始まるが、ここには港湾を利用する初期商人の住宅遺構が残る。これらの遺構はマンハッタンより古い時代に属し、都市建築史的観点から見て貴重である。こうした住宅遺構研究にあわせて、ブルックリンの地域形成に関する基礎史料を収集した。 ブロンクスの都市史に関する史料は、その多くがコロンビア大学エイブリー図書館およびニューヨーク市立図書館に所蔵されており、その調査を通じて、ブルックリンの形成過程が明らかになった。 ブロンクスは当初海沿いの小さな港町から出発するが、マンハッタンの都市化とともに、急速な都市形成を遂げ19世紀以降、さまざまなエスニック・グループによる居住区が成立する。これらの居住区はUrban Enclave(飛び地)というべき形態をとり、ユダヤ人地区、中国人地区、中近東出身者地区、アフロアメリカン地区などが、微妙に距離を隔てつつ占拠する。19世紀の大量移民はマンハッタン島だけでは収容できず、このブルックリンにも居住地を求めて多くの移民が殺到し、それが小さな港町であったブルックリンを急激に変える要因となった。 19世紀半ばに計画され実現されるブルックリン橋は、こうしたマンハッタン島とブルックリンの都市化の結果であって、本来別の地域であった二つの島がマンハッタンの異常ともいえるメガロポリス化を主たる要因として密接不可分な地域となり、マンハッタンの郊外へと編入されていく必然的なプロセスであったといえる。
|