2001 Fiscal Year Annual Research Report
超低熱膨張性をもつ立方晶系リューサイト化合物の設計
Project/Area Number |
12650666
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小林 秀彦 埼玉大学, 工学部, 教授 (60125888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 文雄 埼玉大学, 工学部, 助教授 (40008842)
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Keywords | 低熱膨張 / 立方晶系 / リューサイト化合物 / 組成制御 / 高温X線回折 / 結晶構造解析ソフト / 配位多面体 |
Research Abstract |
限定された温度範囲(200〜600℃)ではあるがゼロ熱膨張特性をもつ立方晶ポルーサイトを標的化合物に選択し、結晶軸の熱膨張異方性をもたない立方晶系リューサイト化合物の超低熱膨張化を試み、その探索指針の可能性を検討した。 具体的には、結晶軸の熱膨張異方性をもたない種々の立方晶系リューサイト化合物を昨年度に引き続いて申請者が開発した多段階焼成法を用いて合成し、これらの熱膨張特性を詳細に調べた。そして、合成した化合物の熱膨張特性とその支配因子の関係を調べた。これらの結果に基づいて、結晶学的立場から結晶構造内の各原子の配列と熱膨張の支配因子との関係を検討した。 以下に、本研究で得られた成果をまとめる。 1 立方晶系リューサイト化合物であるCsMSi_2O_6(M=Al)のCs^+イオンをよりイオン半径の小さいNa^+イオンで部分的に置換したCs-Na-リューサイトを多段階焼成法によって合成した。合成した置換型化合物の25〜1000℃の範囲での熱膨張特性を高温X線回折装置を用いて調査した結果、Na置換量の増大に伴って熱膨張率が減少することを明らかにした。(論文投稿中) 2 立方晶系リューサイト化合物のCs_2MSi_5O_<12>(M=Ni,Zn)においてはその熱膨張率には空隙率の増大に伴った変化は見られなかった。(Si,M)O_4四面体の結合角度はSi/M比の異なる他の立方晶系リューサイト化合物と比較して小さいことをリートベルト解析より明らかにした。 3 合成した化合物の自由空間(空隙率)と線熱膨張係数には相関性があり、自由空間(空隙率)の増大に伴って線熱膨張係数が減少することを見い出した。また、3次元骨格構造の相違はCs^+イオン量の減少による熱膨張特性に及ぼす効果を決定すると考えられた。 4 Cs_<0.9>Al_<0.9>Si_<2.1>O_6のCsをLiで部分的に置換したCs_<0.8>Li_<0.1>Al_<0.9>Si_<2.1>O_6及びCs_<0.7>Li_<0.2>Al_<0.9>Si_<2.1>O_6を合成し、その熱膨張特性を調査した結果、800℃でCs_<0.8>Li_<0.1>Al_<0.9>Si_<2.1>O_6では約0.11%、Cs_<0.7>Li_<0.2>Al_<0.9>Si_<2.1>O_6では約0.08%の熱膨張率を示した。このことより、本研究で見い出した指針によって優れた低熱膨張特性をもつ立方晶系リューサイト化合物を設計・合成できることが分かった。(論文投稿準備中)
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