2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12650722
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Research Institution | Science University of Tokyo |
Principal Investigator |
湯本 久美 東京理科大学, 基礎工学部, 教授 (50103073)
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Keywords | 電子シャワー / セメンタイト / 耐食性 / 磁気特性 / 硬さ / Ni添加 |
Research Abstract |
最近、超鉄鋼材料の作製や低環境負荷鉄鋼材料へのセメンタイト(Fe_3C)の有効利用等が考えられている。しかし、鉄は最も古くから使われている材料であるが、その酸化物、窒化物、炭化物の基礎的特性は充分解明されていない。 我々は電子シャワー法で初めてFe_3C単相膜の作製に成功した。そしてFe_3Cの硬さ(Hv1180)および硬さの温度依存性を求めいる。Fe_3Cは準安定相で、室温放置でも表面がアモルファス化した酸化膜になることを見出した。Fe_3Cの耐食性は鉄の2倍程であまり高くないが、このアモルファス酸化膜のために鉄は腐食しなくなった。つまり、室温放置によりFe_3Cは鉄の保護膜になった。薄膜だけでなく、パーライト内のFe_3Cも室温で表面が酸化した。従って、Fe_3Cの特性評価には充分注意を要する。 (Fe,Ni)_3C膜が作製でき、Ni/Fe=0.05-0.1では飽和磁束密度が純粋なFe_3Cに比べ1.4倍、キュウリー温度は20-30℃増加、硬さは1.3倍になることを初めて見出した。つまり、第三元素添加によりFe_3Cの特性が改善することが分かった。しかし、これ以上Niの割合を増すとNiは固溶出来ないため特性は低下した。(Fe,Ni)_3C膜の耐食性はFe_3Cとほぼ同じであるが、金属のNiが混在してくると耐食性は著しく低下した。 真空蒸着法、活性化反応蒸着法で作製したα-Fe_2O_3膜は密着性が悪いため、鉄の保護膜にならなかった。しかし、電子シャワー蒸着法で作製したα-Fe_2O_3膜は全く剥離せず保護膜になり得た。さらに、鉄に電子シャワー照射すると鉄が錆びなくなることを見出した。多分、鉄表面にFeOが形成しているためと思われる。今後、鉄の新しい防食方法として期待できる。
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[Publications] 山崎 善裕, 湯本 久美: "αFe_2O_3からFe_3O_4薄膜への相対変化に及ぼすフィラメントの加熱効果"表面技術協会. 52. 348-351 (2001)
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[Publications] 湯本 久美, 山崎 善裕, 李 松姫: "電子シャワー蒸着法による鉄の炭化、窒化、酸化膜の作製"プラズマ応用科学. 8. 51-58 (2000)
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[Publications] H.Yumoto, Y.Nagamine: "Corrosion Resistance and Natural Oxidation of Cementite Films Prepared by Electron Shower"Advance in Applied Plasma Science. 3. 251-256 (2001)
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[Publications] H.Yumoto, Y.Nagamine, J.Nagahama, M.Shimotomai: "Corrosion and stability of cementite films prepared by electron shower"Surface Engineering,Surface Instrumentation & Vacuum Technology.