Research Abstract |
現在,電気・電子機器の基板配線にはスズ-鉛はんだが使用されているが,環境問題から鉛を含まないはんだの開発が世界各国で急務となっている。本研究は,最近申請者が独自に発見したスズ合金の融点の予測手法を応用し,従来のはんだに替わる新しい鉛フリーはんだを効率的に開発することを目的としている。 今年度は1次候補合金の選定として,スズをベースにした合金でAg,Bi,Zn,Inを添加し,融点がスズ-鉛はんだと同等の183℃前後になるように設計された合金17種を試作した。これらにつき,融点の確認測定,硬度測定,組織観察,ぬれ性評価を行った。この結果,設計合金の融点はいずれも180〜193℃の範囲内で,融点に関しては当初の設計基準を満たしていることが示された。一方,硬度測定の結果,通常のスズ-鉛はんだの硬度がビッカース硬度で8前後であるのに対して,17種のうち14種が20前後のビッカース硬度となり,かなり硬化していることが確認された。また、それらの微細組織は成分によって大きく異なり,微細組織のもの,大きなデンドライト組織のもの,針状組織を呈するものの3種に大別された。さらに,銅基板とのぬれ性に関しては,いずれの合金もスズ-鉛はんだに比較すると概して悪く,一定条件で加熱した場合のぬれ面積はスズ-鉛はんだの60%程度であることなどが明らかとなった。今後の第2次候補合金の選定に当たって,さらに設計参考データとしてこれら特性におよぼす個々の合金元素の効果の把握が必要と判断されたため,現在,Sn-M(M=Ag,Sb,Bi,In,Pb,Cd,Zn)2元合金を作成し,これら特性におよぼす添加元素の効果を詳細に検討中である。
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