2002 Fiscal Year Annual Research Report
暖帯常緑広葉樹林の持続的維持に関する繁殖生態学的研究
Project/Area Number |
12660128
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池田 裕行 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (30012090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
益守 眞也 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 講師 (50282702)
丹下 健 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (20179922)
井出 雄二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (90213024)
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Keywords | 暖帯常緑広葉樹林 / 持続的維持 / 繁殖生態学 / 種子の動態 / 初期成長 / 光環境 / スダジイ / クスノキ |
Research Abstract |
暖帯広葉樹の被陰下における発芽と初期成長:異なる相対日射量の条件下で発芽と芽生えの消長,幼齢期の成長特性を伊豆半島で調査した。暖帯林で光環境が改善されると,落葉性の陽樹が早く発芽し,定着しやすいこと,常緑樹は発芽に時間がかかるが、一度発芽すると成長は遅いが比較的暗い条件でも枯死しにくいことが示された。また,初期成長において樹種により光環境に対する適応性に違いがあることが示された。 クスノキの芽生えと成長に関わる条件:クスノキ林内においてクスノキ稚樹はほとんど認められない。そこで,異なる培地の発芽,伐採に伴う発芽,林内に植栽した稚樹の成長について伊豆半島で調査した。その結果,クスノキ林表土はクスノキの発芽を抑制しないこと,クスノキを上層に持つ約45年生二次林を伐採することによりクスノキは発芽することを確認した。一方,クスノキ林内に植栽したクスノキ稚樹は培地の違いに関わりなく梢端部の黒変,壊死が多く認められた。クスノキ林の維持管理法を確立するためには,この病変の原因を究明する必要がある。 広葉樹二次林の木本種群落の構造と種の多様性:伊豆半島の広葉樹二次林で,胸高直径4cm以上の個体について調査した。出現種は47種で,スダジイは胸高断面積合計54.5m^2/ha(50%),本数3692本/ha(26%)を示した。スダジイの多いグループでは多様度指数が低く,アカメガシワ,カラスザンショウが上層に多いグループでは多様度指数が高い傾向が認められた。 スダジイ林におけるスダジイ種子の動態:伊豆半島の約70年生スダジイ二次林で2001年にスダジイの落下種子数を調査した。落下充実種子13〜516個/m^2の範囲にある母樹下で,2002年4月に土中に残っている充実種子数,2002年10月に発芽を調査した。落下充実種子の0〜27%が春まで残り,0〜1%が発芽することが確認されたまた,地域の離れた伊豆半島と房総半島において,スダジイとクスノキについて落下種子の傾向を比較調査中である。 その他,スダジイ林における稚樹の生育に及ぼす環境調査と,林床植生の動態調査を実施中である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 益守眞也ほか: "クスノキの芽生えと生長に関わる条件"日本林学会大会学術講演集. 113. 248 (2002)
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[Publications] 池田裕行ほか: "暖帯広葉樹林の伐採地に定着する樹種と,異なる光条件でのそれらの成長特性"日本林学会大会学術講演集. 113. 249 (2002)
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[Publications] 池田裕行ほか: "暖帯広葉樹8種の被陰条件下における発芽と芽生えの消長"日本林学会関東支部大会発表論文集. 54(印刷中).
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[Publications] 辻和明, 池田裕行ほか: "伊豆半島南部の広葉樹二次林における木本種群落の構造と種の多様性"中部森林研究. 51(印刷中).