2000 Fiscal Year Annual Research Report
樹木個体群における遺伝子流の構造解析と繁殖投資効率の遺伝子流量による評価
Project/Area Number |
12660138
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
川口 英之 島根大学, 生物資源科学部, 助教授 (40202030)
|
Keywords | 個体群 / トチノキ / 繁殖 / 遺伝子流 / マイクロサテライト / 送粉 / 花粉親 / アロケーション |
Research Abstract |
京都府美山町芦生のモンドリ谷に生育するトチノキ個体群において、マイクロサテライトマーカーをもちいたDNA解析により、種子の花粉親を判定し、個体群内における送粉による遺伝子流動を明らかにした。谷内で開花した22個体のうち、9個体から得られた種子の花粉親は、谷内に広く分布していた。しかし、6個体では、個体間の距離が離れるにつれて送粉数は有意に減少した。花粉親の、サイズ、雄花数、開花時期の同調度、遺伝子型の近縁度が、送粉数におよぼす影響は、1個体において開花時期の同調により送粉数が有意に増加しただけであった。種子の自殖率は、樹冠につけた雄花数に対して飽和型の関係を示した。雄花を大量につけることは、送粉者の滞在を長くすることにより自殖率を高め、個体間の送粉数を必ずしも多くしないことが示唆された。雄花数と開花時期の同調度が送粉数に対して有意な直線関係を示さなかったのは、送粉者の訪花様式の影響と考えられた。送粉者の訪花様式の影響は、個体間における送粉の非対称性にも現れていた。2個体間のお互いの相対的な送粉数を比較したところ、多くの組み合わせで、一方向的な送粉が行われていた。さらに、9個体を下流から上流へ3グループに分けると、下流から上流のグループへの相対的な送粉が卓越していた。この方向性には非生物的な要因も関与しているものと考えられた。谷外から谷内への遺伝子流量は、谷の出口から奥に向かうにつれて減少した。このことは個体間の遺伝子型の近縁度が、谷の奥のほうで高く、また、奥のほうの個体に対して高くなることにもあられていた。
|
-
[Publications] Satoshi Nanami,Hideyuki Kawaguchi and Takuya Kubo: "Community dynamic models of two dioccious tree species"Ecological Research. 15・2. 159-164 (2000)
-
[Publications] Tsutomu Enoki and Hideyuki Kawaguchi: "Initial nitrogen content and topographic moisture effects on the decomposition of pine needles"Ecological Ressearch. 15・4. 425-434 (2000)