Research Abstract |
本年度は,電気透析法を用いて植物工場培養液の排水に含まれる電解質の分離特性について検討した。今年度の概要,および,結果と意義は,以下の三点に要約される。 はじめに.実際の植物工場培養液排水を用いて,そのなかに含まれるNO_3,PO_4,SO_4,NH_4,K,Ca,Mgイオン等の無機塩濃縮特性を求めたことである。現在,植物工場培養液排水の再利用はある程度実用化の域に達しているが,その再利用の手法は電気伝導度やpHのコントロール,および各イオン濃度の変化予測をもとに液肥の追加や水道水・地下水供給量がプログラムされたもの(リアクター的制御法)である。ここで取り扱った電気透析工程を用いた植物工場培養液排水の無機塩濃縮は,電気伝導度やpHのコントロールは極めて容易であり,また水道水・地下水の供給を少なく取り扱うことが出来るため,植物工場培養液排水の再利用に物質循環の観点から効率良く補助できると考える。次に,植物工場培養液排水に含まれる無機塩(ここではNO_3-NやKイオン)の希釈が十分に可能であったことである。このことは,電気透析の原理から考えると当然であるが,NO_3-NやKイオン等の廃液からの希釈は,土壌環境や水環境での塩の蓄積の減少に貢献するし,今後施行される水質関連の法規に無機イオンの観点から即対応できるものと考える。最後に,本研究では膜種の異なるイオン交換膜を用いて無機イオン分離特性を実際の植物工場培養液排水を用いて評価したことである。実際の植物工場培養液を用いた無機イオンの電気透析分離は,今回初めて行われたことであり,無機イオンの循環再利用に向け,今後資する知見を与えると考える。 以上は,排水中のイオン性物質の回収や,回収される物質について,物質収支,電流効率,エネルギー,膜種の観点から検討したものであり,今後,排水の資源再利用や水環境浄化に関しても,有益な情報を与えると考える。
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