2000 Fiscal Year Annual Research Report
クローン技術の実用化が家畜集団の繁殖構造に及ぼす影響
Project/Area Number |
12660260
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
野村 哲郎 京都産業大学, 工学部, 助教授 (50189437)
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Keywords | クローン / 家畜育種 / 繁殖構造 / 遺伝的多様体 / 集団の有効な大きさ / 遺伝的改良 |
Research Abstract |
本年度は、(1)クローン技術の育種への利用に関する基礎情報の収集、(2)わが国の肉用牛の代表的な品種である黒毛和種における繁殖構造の調査、(3)黒毛和種の育種においてクローン生産された種雄牛が利用されることで生じる繁殖構造の変化に関する試算、の3点について研究を進めた。得られた結果の概要は、以下の通りである。 (1)クローン技術の育種への利用に関する基礎情報の収集 主に国外における文献を収集し、クローン技術の育種への利用方法について調査した。その結果、クローン技術は、(1)同一の遺伝子構成を持つ個体が得られることによる選抜の正確度の向上を利用したクローン検定、(2)種畜の選抜に際して、候補畜のクローン個体について枝肉成績を評価できることを利用した検定、などの利用方法が考えられているが、わが国のように種畜(とくに種雄牛)のクローンを生産し、育種に利用しようとする発想はほとんどないことが明らかになった。 (2)黒毛和種における繁殖構造の調査 アニマルモデルBLUP法による種牛評価が開始されて以来(1991年)、黒毛和種の遺伝的に有効な個体数(集団の有効な大きさ)は激減し、現時点では20を下回っていることが明らかになった。その主な原因は、能力の優れた種雄牛に供用が集中したことにあると考えられた。 (3)黒毛和種の育種においてクローン生産された種雄牛が利用されることで生じる繁殖構造の変化 集団の有効な大きさN_eは、種雄牛の数N_mと種雄牛当たりの後代数の変動係数V_kを用いて、近似的にN_e=4N_m/(V^2_k+1)と書ける。もし、黒毛和種集団で供用が集中している種雄牛のクローンを生産し、それらを種雄牛として供用すれば、V_kが増大し、集団の有効な大きさは減少する。供用頻度について上位数頭の種雄牛をクローン増殖することを想定して試算したところ、集団の有効な大きさは激減することが明らかになった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 野村哲郎: "ハプロタイプが不確定な集団における配偶子関係行列の近似計算"計量生物学. 21,1. 65-76 (2000)
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[Publications] Tetsuro Nomura: "Effective Population Size under Marker-Assisted Selection"Japanese Journal of Biometrics. 21,1. 1-12 (2000)
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[Publications] 野村哲郎: "黒毛和種の集団構造に関する遺伝学的分析"動物遺伝育種研究. 28,1. 59-67 (2000)
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[Publications] Tetsuro Nomura: "Inbreeding and effective population size of Japanese Black Cattle"Journal of Animal Science. 79,2. 366-370 (2001)