2002 Fiscal Year Annual Research Report
精子の持つ卵子活性化因子が胚発生に及ぼす影響の検討
Project/Area Number |
12660263
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
細井 美彦 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (70192739)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 和也 近畿大学, 生物理工学部, 助教授 (20298938)
佐伯 和弘 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (10298937)
入谷 明 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (80026385)
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Keywords | 卵子活性化条件 / 胚発生 / 精子由来活性化因子 |
Research Abstract |
精子の活性化因子が卵子の活性化を誘導すすることが広く知られている。精子は卵子の細胞膜と融合し、カルシウムのオシレーションを引き起こす。このカルシウム波こそが、停止していた卵子の減数分裂を完成させ、有糸分裂へと誘導する鍵となる。我々は精子由来の活性化因子を精子抽出物を卵子へ注入することから検索してきた。しかし、現在までのところ卵子の活性化は誘導できたがその後の発生を得ることはできなかった。そこで、カルシム波を電気刺激により誘導し、その後の発生を比較検討した。 研究で用いたウサギ未受精卵は、老化による活性化が起こりやすい種ではあるが、自然に誘起された活性化では、その後の分割が不均等であり、後期の未着床胚まで発育することはまれである。しかし、排卵直後の卵子に電気刺激を与えるとその分割率は向上し、後期胚までの活性化が確認された。また、この刺激回数は、1、3,5回刺激することにより、後期胚の細胞数、発生率とも上昇する傾向が確認された。これは、卵子への単刺激では、卵子内のMPF活性を十分低下させることができないか、或いは、卵子が胚発生シグナルとして捉えにくい為であると考えられた。これは、精子のカルシム波が、一定期間続くことにより卵子の正常活性化を引き起こしていることと合致する。この様な事実から、受精後の分割が起こりにくい条件では、追加的な刺激が必要であると考えられた。また、我々の行っているカニクイザルの顕微授精でも、著しく受精率の低い傾向がある体外成熟卵子や老化卵子では、追加的刺激による発生率の向上が示唆された。本研究から、精子の活性化因子の能力が不足した場合、付加的な処置によりその受精と発生率が向上する可能性が示唆されたが、根元的な活性化因子の同定にまでは至らなかった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 細井美彦: "霊長類における顕微授精ならびに関連技術の特性"産婦人科の世界. 54巻6号. 27-36 (2002)
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[Publications] 細井美彦: "配偶子操作の展開とARTへの展望"産婦人科の世界. 54巻11号. 3-10 (2002)
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[Publications] 細井美彦: "不妊治療におけるクローン関連技術の利用"産婦人科の世界. 55巻2号. 47-52 (2003)
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[Publications] Y.Hosoi, R.Torii, N.Fujinami, K.Matsumoto, K.Saeki, A.Iritani: "Fertilization by intracytoplasmic sperm injection and subsequent embryo development in vitro to blastocysts in Japanese monkey (Macaca fuscata)"Journal of Mammalian Ova Research. 20巻1号(In print). (2003)
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[Publications] 細井美彦: "生殖医療の全て -クローン技術の現状と課題"医学のあゆみ. 204巻13号. 181-185 (2003)