2001 Fiscal Year Annual Research Report
動物では初めてのウイルス誘発性中枢神経系腫瘍(神経膠腫)の特徴
Project/Area Number |
12660280
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
落合 謙爾 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教授 (80214162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 和彦 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教授 (90250498)
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Keywords | 病理学 / 非化膿性脳炎 / 非化膿性心筋炎 / 鶏 / レトロウイルス / 星状膠細胞(アストロサイト) / 神経膠腫(グリオーマ) / 神経周膜腫 |
Research Abstract |
鶏には散在性髄膜脳炎を背景にもちながらアストロサイトが腫瘍様に増殖する、いわゆるトリの神経膠腫が知られている。しかし、本疾患の原因や病変性状は十分に明らかにされていない。本研究ではトリの神経膠腫の原因、病態を明らかにすべく実験病理学的検索を行った。得られた成果は以下の通りである。1.チャボとSPF鶏の脳内に本疾患罹患脳乳剤またはこれを接種した鶏胚細胞(CEF)培養上清を接種すると、本疾患特有の病変が再現された。このことから、本疾患の他個体への伝達性、すなわち病原ウイルスの関与が示唆された。2.罹患脳乳剤を接種したCEFおよび培養上清からALVと推察されるウイルスが分離された。このウイルスは径100nmで感染CEFの細胞膜に形成されていたウイルス粒子の出芽像はC型レトロウイルスが複製時に形成する出芽像に酷似していた。3.CEF内に存在するALVプロウイルスのenv領域をシークエンスして標準ウイルス株と比較すると、分離したウイルスはALV-A亜群と90%以上、B亜群と92%以上の相同性を示すenv領域を持っていた。4.接種実験鶏には非化膿性心筋炎が高率に併発していた。これらの心筋細胞はウイルス抗原に強陽性を示し、ALV感染時に形成される基質封入体も多数認められた。このことから、原因ウイルスは特に心筋線維で複製する傾向があり、本疾患に関連して非化膿性心筋炎が起こることが明らかとなった。5.初期の結節性脳病変には間葉性細胞が混在せず、小結節は異型性をもつ星状膠細胞の増殖からなっていた。6.実験例の一部に概ね全身の末梢神経系を冒す腫瘍が発生した。これは神経周膜細胞に由来する腫瘍であることが病理学的検索から明らかとなった。 以上の成績から、トリの神経膠腫はALV-AまたはB亜群によって引き起こされるウイルス感染症であることが明らかとなった。本ウイルスに鶏が罹患すると非化膿性脳炎・心筋炎が発生し、その後、約4ヶ月から1〜2年を経て、星状膠細胞あるいは星状膠細胞と間葉性細胞が混在する腫瘍、もしくは、神経周膜細胞腫が発生することが示唆された。本研究の成績から、本疾患の名称はトリのウイルス性神経膠腫と改変されるのが妥当と考えられた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Iwata, N. et al.: "Avian retrovirus infection causes naturally occurring glioma : isolation and transmission of a virus from so-called fowl glioma"Avian Pathology. 31巻・2号. 197-203 (2002)
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[Publications] Iwata, N. et al.: "Nonsuppurative myocarditis associated with so-called fowl glioma"Journal of Veterinary Medical Science. 64巻(in press). (2002)