2000 Fiscal Year Annual Research Report
創薬と遺伝子改変技術を用いたNa^+/Ca^<2+>交換輸送体の生理・病態学的役割の解明
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12670102
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
岩本 隆宏 国立循環器病センター研究所, 循環分子生理部, 室員 (20300973)
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Keywords | Na^+ / Ca^<2+>交換輸送体 / 変異解析 / 阻害薬 / 虚血再灌流障害 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
本研究では、最近我々が見出した特異的なNa^+/Ca^<2+>交換輸送体(NCX)阻害薬KB-R7943およびその新規誘導体を用いて、この輸送体が関わる細胞生理および病態を解明し、この阻害薬の薬物治療応用への可能性を追求する。また、分子生物学的なアプローチとして、各NCX遺伝子を欠損させたES細胞およびマウスを作成し、各NCXの分化・発生並びに生体レベルにおける機能評価をおこなう。本年度に行なった薬理学的な機能解析から、KB-R7943は正常時の心機能や血圧に影響を与えずに、心臓や腎臓の虚血再灌流障害を著明に改善させる効果を有することが明らかになった。また、NCX1ノックアウトマウスを作成しその機能解析を行なったところ、ヘテロ変異型マウスの心臓および腎臓において虚血再灌流障害が起こりにくいことを見出した。これらの結果は、種々臓器の虚血再灌流時にNCXを介する過剰なCa^<2+>流入が起こり、組織障害が引き起こされることを示している。さらに、NCX阻害薬が虚血性臓器障害に対する予防薬・治療薬の有力な候補となり得ることを示唆している。今後、この阻害薬とノックアウトマウスを用いて、他の様々な病態を解析し、さらに新しい機能的知見を見出していきたい。また、NCXの構造およびイオン輸送機構に関して変異機能解析を行ない、この輸送体がポアループを持つ9回膜貫通型の構造であることを明らかにし、またそのポアループ領域に存在する輸送イオンや阻害薬の結合に関わる重要なアミノ酸を同定した。また、リン酸化を介する輸送体制御系について検討を行い、この制御系には直接的な輸送体のリン酸化は関与せず、XIP領域と相互作用する細胞内制御因子が関与することを見出した。現在、この活性制御機構の分子機構を解明するため、この制御因子をクローニングし、輸送体との結合様式、活性化に及ぼす影響を検討中である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 岩本隆宏: "Structural domains influencing sensitivity to isothiourea derivative inhibitor KB-R7943 in cardiac Na^+/Ca^<2+> exchanger"Mol.Pharmacol.. 59・3. 524-531 (2001)
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[Publications] 渡邊泰秀: "Inhibitory effect of 2,3-butanedione monoxime (BDM) on Na^+/Ca^<2+> exchange current in guinea-pig cardiac ventricular myocytes"Br.J.Pharmacol.. (印刷中).
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[Publications] 岩本隆宏: "The Na^+/Ca^<2+> exchanger NCX1 has oppositely oriented reentrant loop domains that contain conserved aspartic acids whose mutation alters its apparent Ca^<2+> affinity."J.Biol.Chem.. 275・49. 38571-38580 (2000)
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[Publications] 脇本公嗣: "Targeted disruption of Na^+/Ca^<2+> exchanger gene leads to cardiomyocyte apoptosis and defects in heartbeat."J.Biol.Chem.. 275・47. 36991-36998 (2000)
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[Publications] Yan Pan: "Physiological functions of the regulatory domains of the cardiac Na^+/Ca^<2+> exchanger NCX1."Am.J.Physiol.. 279・2. C393-C402 (2000)
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[Publications] Michiko Tashiro: "Transport of magnesium by two isoforms of the Na^+/Ca^<2+> exchanger expressed in CCL39 fibroblasts."Pflugers Arch. 440・6. 819-827 (2000)
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[Publications] 若林繁夫: "シリーズ・ニューバイオフィジックスII-3ポンプとトランスポーターNa^+駆動性交換輸送体-細胞内イオン環境を制御する巧みな分子装置"共立出版株式会社. 240 (2000)