2000 Fiscal Year Annual Research Report
生体防御・老化予防を目指したチオレドキシンの細胞保護作用の分子機構の解析
Project/Area Number |
12670113
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 肇 京都大学, ウイルス研究所, 助教授 (70303914)
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Keywords | チオレドキシン / ストレス / トランスジェニックマウス / 白血球 / 間質性肺炎 / レドックス / 生体防御 / 老化 |
Research Abstract |
ヒトチオレドキシンをβ-actin promoter制御下に全身に過剰発現させたトランスジェニックマウス(TRX-Tg)を用い、チオレドキシンの生体防御における役割について検討した結果、TRX-Tgは対照マウスと比較して、種々の酸化ストレスに耐性を示すことを明らかにした。TRX-Tgは対照マウスと比較して虚血による酸化タンパク質の集積が抑制され、脳梗塞巣が縮小される他、虚血性腎障害も抑制された。またTRX-Tgの骨髄細胞は紫外線によるコロニー形成抑制に抵抗性を示し、TRX-Tgは対照マウスと比較して約25%の長寿傾向を示した。さらにTRX-Tgは抗癌剤であるブレオマイシンによる間質性肺炎・肺線維症が抑制され、IL-2+IL-18による致死的な間質性肺炎・肺傷害に対しても抵抗性を示した。この現象を説明するメカニズムとして、従来より明らかにされているチオレドキシンの抗酸化作用のみならず、循環血液中に放出されたチオレドキシンが白血球の血管外への漏出を抑制するという新たな作用基序を明らかにした。すなわち、マウスair pouchモデルにおいて、lipopolysaccharide(LPS)をpouch内へ投与すると、好中球を主とした白血球のpouch内への血管外漏出が誘導されることが知られているが、TRX-Tgでは、LPSよる好中球の血管外漏出が抑制された。LPSにより活性化された好中球は細胞表面のL-Selectin(CD62L)の発現の減少が認められるが、TRX-Tgではその減少は抑制された。さらに、好中球を血管内皮細胞単層培養上に添加する系において、チオレドキシンは好中球の血管内皮細胞との接着を阻害することを明らかにした。今後、これらの現象をさらに分子レベルで解析する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] H.Nakamura, et al.(10名、1番): "Expression of Thioredoxin and Glutaredoxin, Redox-Regulating Proteins, in Pancreatic Cancer"Cancer Detection and Prevention. 24. 53-60 (2000)
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[Publications] K.Shioji, et al.(7名、3番): "Upregulation of thioredoxin expression in giant cell myocarditis in rats"FEBS Letter. 472. 109-113 (2000)
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[Publications] Y.Sumita, et al.(11名、10番): "Serum thioredoxin levels as indicators of oxidative stress and responses to interferon therapy in patients with hepatitis C virus infection"Journal of Hepatology. 33. 616-622 (2000)
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[Publications] K.Hirota, et al.(8名、2番): "Geranylgeranylacetone induces thioredoxin and suppresses ethanol-induced injury in cultured hepatocytes"Biochemical and Biophysical Research Communications. 275. 825-830 (2000)
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[Publications] M.Kobayashi, et al.(4名、2番): "Immunohistochemical localization of thioredoxin and glutaredoxin in mouse embryos and fetuses"Antioxidants and Redox Signaling. 2. 653-663 (2000)
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[Publications] A.Abdiu, et al.(5名、2番): "Thioredoxin blood level increase after severe burn injury"Antioxidants and Redox Signaling. 2. 707-716 (2000)