2001 Fiscal Year Annual Research Report
ESR・NMR分光及び結晶構造に基づくヘムオキシゲナーゼによるヘム分解機構の検討
Project/Area Number |
12670125
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
野口 正人 久留米大学, 医学部, 教授 (10124611)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 寛 久留米大学, 医学部, 講師 (70309748)
|
Keywords | ヘムオキシゲナーゼ / α-ヒドロキシヘム / α-ベルドヘム / ヘム-ヘムオキシゲナーゼ複合体 / 結晶構造 |
Research Abstract |
ヘムオキシゲナーゼ(HO)はO_2とNADPHの還元力を利用してヘムをα特異的に開裂し、ビリベルジン、鉄、COを生成する。本研究ではC末端の膜結合ドメインを除いた短縮型ラットHO-1の大腸菌での発現系を確立し、昨年度は阪大大学院福山研との共同研究によりヘムとの複合体の結晶構造を決定した。本年度は同共同研究により、ヘムを結合していないapoHOの構造を決定した(投稿中)。apoHOの全体構造はHO-ヘム複合体(HO-heme)と似ているが、ヘムポケットの構造には明確な差異がみられた。apoHOでは、近位ヘリックス(A-helix)はdisorderしており、ヘムポケットの一部を形成しているB-helixはヘムポケット部位にシフトしていた。とりわけ、B-helix中のGln38がHO-hemeでは本来ヘムが位置する部位に移動していたことが注目される。何故なら、HO-hemeにおいて、Gln38はA-helixのC末側に存在するGlu29と水素結合をしており、この水素結合がA-helixとB-helixの角度を決定しているからである。さらに、apoHOでは遠位ヘリックス(F-helix)がrandom coil状となっていた。以上のようなapoHOの構造から、ヘムが結合するとき、A-helixがHis25を介して安定化され、ついでB-helixが大規模な移動する結果Gln38とGlu29との間に水素結合が形成され、最後にF-helixの固定が起こることが推定された。 HO反応は3段階の酸素添加反応からなるが、第2ステップのヒドロキシヘムからベルドヘムへの転換反応については、O_2のみで起こると主張するグループと、O_2に加えて1eの供給が必要であると主張するグループとの対立があった。我々はこの反応がO_2のみで起こり生成されたベルドヘムは2価であることを報告した。これに対して後者から、1eの供給なしでヒドロキシヘムから生成されるものはporphyrinが酸化されたporphyrin(Fe^<3+>)π cation radicalであり、O_2酸化物はNa_2S_2O_4によって再還元されてヒドロキシヘムに戻るという反論が出された。そこで、HOに結合したヒドロキシヘムとペルドヘムのO_2およびNa_2S_2O_4に対する反応性を検討した(投稿中)。ヒドロキシヘム(Fe^<3+>)は当量のO_2によってベルドヘム(Fe^<2+>)に転換される。決してporphyrin(Fe^<3+>)π cation radicalではない。過剰のO_2暴露によってベルドヘム(Fe^<2+>)はさらに酸化されるが、その酸化物は未同定である。一方ベルドヘム(Fe^<2+>)はNa_2S_2O_4によって還元されて、π-neutral radical様の物質に変化する。このものは生理的な還元系であるNADPH-cytochrome P450 reductaseを用いたヘム分解反応ではみられない。 よってNa_2S_2O_4は生理的なヘム分解反応を検討する場合、還元剤として使用することは不適当であると結論された。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Makoto Nakai: "Binding characteristics of dialkyl phthalates for the estrogen receptor"Biochemical and Biophysical Research Communications. 254. 311-314 (1999)
-
[Publications] Hiroshi Sakamoto: "Ferric α-hydroxyheme bound to heme oxygenase can be converted to verdoheme by dioxygen in the absence of added reducing equivalents"Journal of Biological Chemistry. 274. 18196-18200 (1999)
-
[Publications] Hitoshi Ehara: "Bis[2-(2-pyridyl)phenyl] diselenide, a more effective catalyst for oxidation of alcohols to carbonyl compounds"Journal of the Chemical Society. Perkin Trans.1. 9. 1429-1431 (2000)
-
[Publications] Masakazu Sugishima: "Crystal structure of rat heme oxygenase-1 in complex with heme"FEBS Letters. 471. 61-66 (2000)
-
[Publications] Hiroshi Sakamoto: "Separation and identification of the regioisomers of verdoheme by reverdes-phase ion-pair high-performance liquid chromatography, and characterization of their complexes with heme oxygenase"Journal of Inorganic Biochemistry. 82. 113-121 (2000)
-
[Publications] Kazuho Hirata: "Heme oxygenase1 (HSP-32) is induced in myelin-phagocytosing Schwann cells of injured sciatic nerves in the rat"European Journal of Neuroscience. 12. 4147-4152 (2000)
-
[Publications] 野口 正人: "医科生化学 (竹重ら編)"(株)講談社サイエンティフィク. 334 (2000)