2001 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者におけるBinswanger脳症発生機序に関する病理学的研究
Project/Area Number |
12670155
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Research Institution | Tokyo Medical & Dental University |
Principal Investigator |
桶田 理喜 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (70013977)
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Keywords | 悪性高血圧 / 血管性痴呆 / ビンスワンガー脳症 / 悪性腎硬化症 / 脳動脈 |
Research Abstract |
研究の背景と目的:血管性痴呆の中で重要な位置を占める疾患、Binswanger脳症(以下BEと略)は大脳白質に濡漫性髄鞘脱落と萎縮を来して痴呆を生じる疾患であり、その原因には高血圧があるとされており、我々もそれを確かめると共に、この病変発生機序はそこを栄養する髄質動脈の高血圧性中膜平滑筋消失と内膜の線維化による、言わば「土管化」である事も明らかにした。しかし、BEでは何故大脳髄質動脈に高度の高血圧性病変が生じるのか、それはBEで見られる高血圧が高度だからなのか、と言う1点は未解決であった。本研究の目的は、極度の高血圧を来す悪性高血圧(malignant hypertension,以下MHと略)では脳動脈にどの様な病変がどの様に分布するか、それはBEと比べてどうか、と言う点をMHの剖検例の脳動脈について、高血圧の指標となる動脈中膜の肥大並びに髄質動脈病変を連続切片再構築によって検索し、それを6例の正常血圧例と比較し、上記の未解決の点を解明する事にある。 症例と方法:5例のMH剖検例の前頭葉の上前頭回〜脳梁を含む切片から700〜1,000枚の連続切片を作製し、その5枚毎にElastica-Masson染色を施し、そこに見い出される全ての髄質動脈を再構築し、その病変の性状、程度、分布を調べた。又、標本内で直角に横断された動脈の組織計測によって内腔が伸展した状態の半径Rと中膜の厚さDを算出し、RとDの間に成り立つ回帰直線を正常血圧例のそれと比較して高血圧による中膜肥大があるか否かを調べた。 結論:動脈中膜肥大の点では、高血圧の影響はクモ膜動脈に比べて髄質動脈には及びにくい。髄質動脈病変は心重量が900gと、最も重い1例のみにBEのそれに匹敵する病変が生じていた。しかし、大脳白質の萎縮はなかった。従って、BEは単に高血圧のみによるのではなくて、高血圧によって動脈が傷害され易い遺伝的要因が関与している可能性が高いと結論された。
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