2001 Fiscal Year Annual Research Report
大腸がん検診の合理的なスクリーニングシステムの確立に関する臨床的疫学的研究
Project/Area Number |
12670340
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
斎藤 博 弘前大学, 生涯学習教育研究センター, 助教授 (70196004)
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Keywords | 大腸がん検診 / 免疫便潜血検査 / 2日法 / 死亡率減少効果 / 症例対照研究 / セルフ・セレクションバイアス |
Research Abstract |
今年度の成果 昨年把握・集積した1993.1.1〜1998.12.31の大腸癌罹患例1016例を吟味し、登録の重複例や年齢、1992年以前の大腸癌罹患歴など除外規定による152例と、死亡例についてはさらに他病死(34例)を除き、最終的に死亡例は121例、生存罹患例は709例となり、それぞれ349人と、1916人(707例に対して)の条件を満す対照を選択しえた。これら受診歴を調査し、データベースを完成した。 死亡例のうち12例は、精検未受診あるいは症状を動機とした受診歴を有し、有効性評価に不適切なため、これらを含むセットを除いて解析した。検診受診「あり」の「なし」に対する大腸がん死亡のオッズ比は過去1,2,3,4,5年以内の受診歴について、それぞれ0.33(95%信頼区間:0.13-0.84),0.53(0.27-1.07),O.54(0.28-1.04),0.64(0.36-1.15),0.52(0.27-1.01)と2年以上ではborderline significanceであったが1より低く、受診により大腸癌死亡のリスクが低下することが示唆され、逐年受診では67%の低下であった。 症例対照研究では不可避のself-selection biasによる効果の過大評価がなかったかを検討するために、解析に用いた全罹患例とそれらの対照で症例・対照の受診歴「あり」の「なし」に対する大腸癌罹患のオッズ比を最終受診からの年数別に計算した。このオッズ比は「あり」の群と「なし」の群のその時点での罹患率の比を近似すると考えられ、理論的には1年目で検診発見癌により1.0より高くなった後、受診群と非受診群の元の罹患率の比のレベルでプラトーになる。最終受診からの年数別のオッズ比は1年で2.11(1.70-2.62)と有意に高く、4年で1.04(0.53-2.06),5年で1.03(0.48-2.21)と約1.0で推移し罹患率は受診群と非受診群でほぼ同じと示唆された。すなわち死亡リスクの減少が、self-selection biasによる見かけ上のものではないことが示唆された。 以上から現行の免疫便潜血検査2日法の死亡率減少効果が強く示唆された。
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