2001 Fiscal Year Annual Research Report
濫用有機溶媒の精子形成に及ぼす影響:形態変化と造精機能障害の分子生物学的検討
Project/Area Number |
12670395
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
徳永 逸夫 徳島大学, 医学部, 助教授 (30116842)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤田 貴子 徳島大学, 医学部, 助手 (50304506)
北村 修 徳島大学, 医学部, 講師 (70266609)
久保 真一 徳島大学, 医学部, 教授 (10205122)
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Keywords | 法医学 / 濫用薬物 / トルエン / 造精機能 / 精巣 / 形態学 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
Wistar系雄性ラットを用い,トルエン(1,500ppm)を1日4時間,7日間吸入させた。精巣,精巣上体について,免疫組織化学的に,DNA損傷の指標である8-OH-dGを染色したところ,精細管の精祖細胞における8-OH-dGの陽性像の亢進が認められた。8-OH-dGを定量したところ,対照群に対するトルエン吸入群の% of controlは,精巣では有意差(p=0.5854)は認められないものの増加がみられたことから,酸化的DNA傷害の発生が示唆され,生殖機能への影響が考えられた。また,精巣上体では,8-0H-dG量は減少していた(p=0.1023)。脂質過酸化の指標である4-HNEの免疫染色では,対照群,トルエン吸入群とも精巣で明らかな陽性所見は認められなかった。精巣のLPOを定量した結果,対照群とトルエン吸入群との間に明らかな差異は認められなかった。これらのことから,精巣,精細管細胞の細胞膜における脂質過酸化は明らかではなかった。以上のことから,酸化的DNA損傷による8-OH-dG生成は認められたものの,過酸化障害における過酸化脂質形成は明らかではなかった。酸化的DNA損傷にはSODが大きな役割を担っていると言われている。そこで,SODの免疫組織化学的検索を行ったが,トルエン吸引群において明らかな陽性像の増加はみられなかった。即ち,DNAの酸化的損傷が増大するにもかかわらず,SODによる活性酸素消去系が活性化されていないものと考えられた。したがって,精巣では,活性酸素の酵素的な消去機構以外の,グルタチオンペルオキシダーゼ,カタラーゼなどによる活性酸素消去系によるH20への還元が強力に働いたものと思われた。
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