ヘリコバクター・ピロリ関連疾患発症における宿主側因子としての胃粘液の解析

2002 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 12670513
• Research Institution: Kitasato University
• Principal Investigator: 五艘 行信 北里大学, 医学部, 講師 (20112659)
• Keywords: ヘリコバクター・ピロリ / 抗ムチン抗体 / ムチン糖鎖 / 粘膜ゲル層 / ムチン / 胃粘液

Research Abstract

本年度は当初計画(b)の項目において、胃粘膜表層由来ムチンと深部由来ムチンの分離に必須の道具となる抗表層ムチンモノクローナル抗体の作成とその性質の解析について集中的に検討を行った。
1.Hpは胃粘膜表層細胞に接着して存在するとともに、胃表層粘液ゲル層中にも存在する。しかし、深部粘液ゲル層には存在せず、その理由を探ることがHp感染に対する粘液の役割を知る上で大きな情報をもたらすと考えられた。そこで、ヒト胃表層由来ムチンと特異的に反応するモノクローナル抗体を、我々が作成した抗ラットムチンモノクローナル抗体のライブラリーから検索した。その結果、RGM23と名付けたモノクローナル抗体がヒト胃表層由来ムチンと反応することを見いだした。
2.次に、RGM23の性質について、ラットおよびヒトの胃粘膜組織とそこから抽出・精製して得られた胃ムチンを材料として、組織化学的ならびに生化学的に解析した。その結果、RGM23はムチンのタンパク部分を認識すること、表層由来ムチンと特異的に反応する、すなわち深部由来ムチンとは反応しないこと、ラット消化管の免疫組織染色において、胃粘膜のみを染色すること、などの結果が得られた。これらの結果は、RGM23がMUC5ACムチンを認識することを示した。さらにこの抗体は、既に開発されている抗MUC5AC抗体である45M1と異なり、ムチンサブユニットをも認識することが明らかとなった。
3.RGM23をムチン検出の道具として用いれば、ヒト胃粘膜ムチンを表層由来ムチンと深部由来ムチンに分けることが可能と考えられ、なぜ表層粘液ゲル層のみHpが存在するのか、その理由の解明に一歩近づいたと言える。

Research Products

• [Publications] Y.Goso 他4名: "Characterization of rat gastric mucins using a monoclonal antibody, RGM23, recognizing surface mucous cell-type mucins"J. Biochem. (in press). (2003)
• [Publications] T.Ikezawa 他5名: "Immunohistochemical localization in rat gastrointestinal tract of a sialomucin species recognized by HCM31, a new anti-mucin monoclonal antibody"Biomed. Res.. 23. 63-68 (2002)
• [Publications] Y.Goso 他4名: "Purification and characterization of α-L-fucosidases from Streptomyces sp. OH11242"Comp. Biochem. Phsiol. 130. 375-383 (2001)
• [Publications] Y.Kojima 他7名: "Ex-vivo Gastric Chamberによるラット胃粘膜の肉眼的観察法を用いたアスピリン起因性胃粘膜傷害に対するTeprenone前投与の検討"薬理と治療. 29. 245-251 (2001)