2001 Fiscal Year Annual Research Report
レジオネラ肺炎におけるアポトーシス誘導機序に関する研究
Project/Area Number |
12670566
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
斎藤 厚 琉球大学, 医学部, 教授 (90039842)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小出 道夫 琉球大学, 医学部, 助手 (40234679)
比嘉 太 琉球大学, 医学部・付属病院, 助手 (50291555)
|
Keywords | レジオネラ肺炎 / Legionella longbeachae / アポトーシス / 細胞障害性 / 細胞増殖能 / caspase / TNF-α / FAS |
Research Abstract |
市中肺炎および院内肺炎の一つとして重要なレジオネラ肺炎は、早期に診断および治療が開始されなけば致死的となる肺炎であるがその病態については不明な点も多い。近年、様々な病原微生物とアポトーシスに関する報告がなされ、病態生理学的な意義、すなわち感染拡大、炎症のトリガー、細胞内寄生菌では持続感染を惹起するため感染細胞のアポトーシス抑制、さらに生体防御機構の一つとして注目されている。今回、我々はレジオネラ肺炎の起因菌のひとつとして重要なLegionella longbeachae(L. longbeachae)を用い、宿主細胞であるマクロファージに対する細胞障害性、アポトーシス誘導能、およびその機序に関して検討を加えた。さらにL. longbeachaeの病原因子の一つとして重要なMIP蛋白を欠如したmip mutantを用い、アポトーシス誘導能について親株との比較を行った。このmip mutantはAcanthamoebaeに感染できず、モルモットの感染実験でも病原性の低下が報告されている。L. longbeachaeはマクロファージ内で増殖し同時に細胞傷害性を有していた。また本菌の感染したマクロファージのDNAの断片化はアガロース電気泳動法、TUNEL法によって証明された。また、加熱処理をした菌にアポトーシス誘導能は認められず生菌のみがアポトーシス誘導能を有していた。フローサイトメトリーを用い細胞をAnnexinVで染色することにより細胞内で増殖を開始する以前の感染早期からマクロファージはアポトーシスを起こしていることが明らかとなった。L. longbeachae mip mutantは細胞内での感染48時間まで細胞内の増殖は認められなかったが、アポトーシスを誘導した。これは細胞内の菌の増殖が必ずしもアポトーシスの誘導に関与していないことが示された。感染細胞のアポトーシスはcaspase阻害剤であるZ-VADにより抑制されcaspaseを介することが示唆された。FASの発現は感染後期に上昇した。感染細胞のTNF-αreceptorの発現、上清中のTNF-αは経時的に上昇したものの、抗TNF-α抗体添加細胞にアポトーシスが認められ本菌によるアポトーシスはFASやTNFを介さず、未知の機序によるものと考えられた。
|
Research Products
(23 results)
-
[Publications] Michio Koide, Noriko Arakaki, Atsushi Saito: "Distribution of Legionella longbeachae and other legionellae in Japanese potting soils"Journal of Infection Chemotherapy. 7. 224-227 (2001)
-
[Publications] Futoshi Higa, Paul H. Edelstein: "Potential Virulence Role of the Legionella pneumophila ptsP Ortholog"Infection and Immunity. 69. 4782-4789 (2001)
-
[Publications] Noriko Arakaki, Futoshi Higa, Michio Koide, Masao Tateyama, Atsushi Saito: "Induction of apoptosis of human macrophages in vitro by Legionella longbeachae through activation of the caspase pathway"Journal of Medical Microbiology. 51. 159-168 (2002)
-
[Publications] 小出道夫: "レジオネラ肺炎"最新医療情報誌アニムス. 17. 22-26 (2000)
-
[Publications] 小出道夫, 斎藤 厚: "レジオネラ肺炎"臨床と研究. 77. 44-48 (2000)
-
[Publications] 小出道夫, 斎藤 厚: "レジオネラによる病院感染とその対策"治療. 82. 118-123 (2000)
-
[Publications] 斎藤厚: "感染症と化学療法"日本医事新報. 3960. 1-7 (2000)
-
[Publications] 小出道夫, 斎藤 厚: "レジオネラ"medicina. 37. 649-651 (2000)
-
[Publications] 小出道夫: "レジオネラ症"内科. 85. 1439 (2000)
-
[Publications] 小出道夫, 斎藤 厚: "レジオネラ感染症"今月の治療. 8. 794-795 (2000)
-
[Publications] 新垣紀子, 斎藤 厚: "レジオネラ肺炎"内科. 86. 727-732 (2000)
-
[Publications] 當山真人, 斎藤 厚: "Compromised hostに発症したレジオネラ肺炎"今月の治療. 8. 211-214 (2000)
-
[Publications] 小出道夫: "腐葉土とレジオネラ"検査と技術. 29. 428 (2001)
-
[Publications] 小出道夫, 斎藤 厚: "新興再興感染症、レジオネラ肺炎"分子呼吸器病. 5. 32-38 (2001)
-
[Publications] 比嘉 太, 山本夏男, 斎藤 厚: "レジオネラ感染症"内科. 87. 1383-1386 (2001)
-
[Publications] 小出道夫, 斎藤 厚: "実践感染症新法、レジオネラ症"最新医学. 56. 42-47 (2001)
-
[Publications] 健山正男, 斎藤 厚: "本邦臨床統計集、レジオネラ肺炎"日本臨床. 59. 126-133 (2001)
-
[Publications] 比嘉 太, 斎藤 厚: "細胞内増殖菌感染症の分子病態"日本胸部臨床. 60. 14-17 (2001)
-
[Publications] 小出道夫: "Legionella(Isolation of Legionella longbeachae and Legionellaspp. from Japanese potting soils)"ASM. 4 (2002)
-
[Publications] 斎藤 厚: "感染予防必携(レジオネラ症)"日本公衆衛生協会. 7 (2000)
-
[Publications] 小出道夫: "感染症(レジオネラ症)"メデイカルトリビューン. 11 (2000)
-
[Publications] 斎藤 厚: "感染症診療ハンドブック(レジオネラ肺炎、在郷軍人病)"中外医学社. 2 (2001)
-
[Publications] 宮良高維, 斎藤 厚: "ガイドラインをふまえた成人市中肺炎の実際(レジオネラ)"中外医学社. 5 (2001)