2001 Fiscal Year Annual Research Report
適応から破綻に至る心肥大進展過程のシグナル伝達の変化とその活性酸素による制御機構
Project/Area Number |
12670670
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Research Institution | Shimane Medical University |
Principal Investigator |
田中 光一 島根医科大学, 医学部, 助手 (00252924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 正明 島根医科大学, 医学部, 助教授 (90127530)
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Keywords | 心肥大 / 活性酸素 / MAPK |
Research Abstract |
【目的】心肥大誘導刺激を心筋細胞に加えた際の心筋細胞内活性酸素レベルの変化およびその発生源、またその変化がMAPK活性・心筋蛋白代謝に及ぼす作用について明らかにした。【方法】10週齢雄SDラットより心筋細胞を分離・培養した。endothelin-1(ET)・phenylephrine(PE)刺激の後、蛍光色素としてdichlorofluoresceinを細胞に負荷し、蛍光顕微鏡下に心筋細胞の蛍光輝度を測定することにより細胞内活性酸素レベルの変化を解析した。また細胞をDPI(NADH/NADPH oxidase inhibitor)またはロテノン(ミトコンドリア電子伝達阻害剤)で処理した後ET・PE刺激を行い、心筋細胞内活性酸素を測定し、活性酸素の発生源について推測した。一方、ET・PE刺激後の心筋細胞内MAPK(ERK、p38、JNK)活性をウエスタンブロット法にて解析、また抗酸化剤であるN-acetyl cysteine(NAC)・catalase処理により細胞内活性酸素を低下させた後心筋細胞をET・PEにて刺激後MAPK活性・^3H-phenylalanineの心筋細胞への取り込みを測定し、活性酸素レベルの変化が心肥大シグナルおよび心筋蛋白代謝に及ぼす作用について検討した。MAPK活性の変化については、従来より心肥大研究に広く用いられてきた新生児ラット心筋細胞における変化を我々が本研究において使用した成熟ラット心筋細胞における変化と比較し、その相違を明らかにした。【結果】心筋細胞内活性酸素はET・PE刺激後5分をピークに急速に増加した。その増加はPPI処理により抑制されたがロテノン処理によっては抑制されなかったことより、同刺激により増加する心筋細胞内活性酸素の発生源は細胞膜のNADH/NADPH oxidaseと推測された。成熟ラット心筋細胞において同刺激は刺激後5分をピークにERK活性を増加させたが、p38・JNK活性を変化させなかった。一方、新生児ラット心筋細胞において同刺激は細胞内ERK・P38・JNK活性を全て増加させた。成熟ラット心筋細胞における同刺激によるERK活性・細胞への^3H-phenylalanine取り込みの増加は抗酸化剤の投与により抑制され、活性酸素が細胞内シグナル伝達因子として心肥大の進展を制御している可能性が示唆された。【結語】活性酸素は心筋細胞内において心肥大のシグナル伝達因子として機能していること、その発生源は細胞膜のNADH/NADPH oxidaseと推測されること、成熟ラットと新生児ラットの心筋細胞において心肥大誘導刺激に対する細胞内シグナルの反応性が異なることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)