2000 Fiscal Year Annual Research Report
有機溶剤依存の病態および治療に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
12670953
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
福居 顕二 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (50165263)
|
Keywords | 有機溶剤依存 / 免疫組織化学 / リン酸化CREB / ラット / 中枢神経系 |
Research Abstract |
有機溶剤の吸入により生じる精神依存、それに基づく精神症状が、DAニューロンの神経伝達変化と深く関わっていることから、そのメカニズムのなかのcAMP response element(CRE)に結合する転写因子であるCRE-binding protein(CREB)のリン酸化に着目し、免疫組織化学的および分子生物学的手法を用いて、生体内中枢神経系における有機溶剤依存のメカニズムを検索した。 実験動物は生後50日齢のWistar系雄性ラットを用いた。トルエン曝露は以下の方法で行った。動物を透明なプラスティック容器(60×40×35cm)内にトルエン(2ml,2000ppm)を吸収させたろ紙の入ったシャーレを置き、その中に飼育ケージごと動物を、3時間の急性曝露をおこなった。対照動物も同様の処置をトルエンの入っていない別の容器を用いて同時に行った。また、容器内のトルエン濃度・酸素濃度も一定に保った。 抗CREB抗体と抗P-CREB抗体を用いた免疫組織化学法による実験を行った。4%パラホルムアルデヒドで潅流固定後脳を摘出、ショ糖に48時間浸けたのちに凍結しクリオスタットにて切片を作成した。CREBまたはリン酸化CREB(P-CREB)に対する特異抗体(1次抗体)を各々室温で4日から7日間反応させたのち、型通りのABC法をおこない、光学顕微鏡を用いて観察した。 対照群においては、明らかなリン酸化CREB免疫陽性細胞は認められなかった。トルエン単回吸引による急性曝露群においては、対照群に比してリン酸化CREB免疫反応が増強する傾向が認められた。トルエン急性曝露群における、リン酸化CREB免疫陽性構造は主に神経細胞の核に限局して観察された。トルエン急性曝露群におけるリン酸化CREB免疫陽性細胞は、嗅皮質、前頭葉皮質、帯状回皮質、側頭葉皮質、海馬の一部などに分布する傾向が認められた。 次年度は、例数を増やし、慢性曝露群との比較を行い、依存や神経毒性のメカニズムを明らかにしたい。
|