2002 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス関連転写調節分子を介するヒトβ1アドレナリン受容体遺伝子発現調節機構
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12670961
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
松井 宏晃 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (90181685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝倉 幹雄 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教授 (70103504)
廣井 朋子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (20238398)
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Keywords | β1アドレナリン受容体遺伝子 / 転写抑制 / NF-Y / CREB / グルココルチコイド受容体 |
Research Abstract |
平成13年度までの研究で、ヒトβ_1アドレナリン受容体(AR)遺伝子基礎転写には、翻訳開始点から5'上流-403/-364領域中、-364近傍に結合する転写因子が、-364/-342に結合する転写因子と協調的に作用している可能性が示唆された。データベース検索により-369/-365にCATT boxの逆配列(ATTGG)を見出した。ATGG配列にATTAAと変異を導入すると基礎転写活性は著しく低下した。ATTGG領域をプローブにゲルシフトアッセイを行い、同領域に結合する転写因子をNF-Yと推定した。NF-YはNF-YA、-YB、-YCサブユニットで構成される3量体である。SY5Y細胞核抽出物を用いたウエスタンブロット解析によりNF-YA、-YB、-YCサブユニットの存在を確認した。抗NF-YA、-YB抗体存在下のゲルシフトアッセイではスーパーシフトが認められたが、抗NF-YC抗体では認められなかった。このことから、NF-Yに他のタンパク質(転写因子)が結合し、抗NF-YC抗体が認識するエピトープ部位が覆われている可能性が示唆された。平成13年度の研究で同定したCREB結合類似配列(TGACGCGA:-353/-346)と本年度同定したNF-Y結合部位との距離は11bpで、DNA構造上ほぼ1回転に相当する。従って、NF-Y、CREBはDNAの同側に結合し、協調的にヒトβ_1AR遺伝子基礎転写活性に関るものと考えられる。ラットに抗うつ薬を長期投与後NF-YB mRNAが減少することから、抗うつ薬投与後に観察されるβ_1AR mRNA減少は、NF-YBの減少により引き起こされたNF-Yの減少を介したβ_1AR遺伝子基礎転写活性の低下を反映している可能性が考えられる。さらにグルココルチコイド(GC)受容体がNF-Yと結合し、補足するためにβ_1AR遺伝子プロモーター領域で利用されるNF-Yが減少し、β_1AR遺伝子発現が抑制される可能性が示唆された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 朝倉幹雄: "うつ病像を形成する生物学的背景と適切な抗うつ療法"日本神経精神薬理学雑誌. 22・6. 239 (2002)
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[Publications] 藤井佐知子: "慢性変動性ストレス後に引き起こされるラット青斑核チロシン水酸化酵素のストレス感作状態"日本神経精神薬理学雑誌. 22・6. 311 (2002)
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[Publications] 長島秀明: "慢性変動性ストレスによるCRH神経活動低下と感受性亢進"日本神経精神薬理学雑誌. 22・6. 312 (2002)
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[Publications] 田中大輔: "慢性変動性ストレス後のラット青斑核におけるp-CREBを介したチロシン水酸化酵素の制御"日本神経精神薬理学雑誌. 22・6. 313 (2002)
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[Publications] 菱沼拓児: "ラットmedial prefrontal cortex CRH 1受容体の慢性変動性ストレスによる変化"日本神経精神薬理学雑誌. 22・6. 314 (2002)