2000 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子AML1(PEBP2αB)の転座型異常による白血病発症の分子機構
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12671000
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
奥田 司 京都府立医科大学, 医学部, 講師 (30291587)
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Keywords | AML1 / AML1-MTG8 / RUNX1 / ETO / 白血病 / 染色体転座 / 転写因子 / ES細胞 |
Research Abstract |
AML1遺伝子は、ヒト白血病における染色体転座の最も高頻度の標的であり、造血発生制御に関与する転写調節因子をコードしている。AML1あるいはその融合型白血病遺伝子産物の生物活性には、それ自身の受ける転写調節が重要となる。一方、融合型白血病遺伝子であるAML1-MTG8は、その発現のみでは白血病発生に不十分であることが示唆されている。そこで当該研究ではこれらの点について以下の検討を行った。 1.選択的スプライシングによって産生されるマウスAML1cアイソフォームのcDNAを5'-RACE法によって新規にクローニングした。 2.マウスES細胞をin vitroで分化させるES細胞の実験システムを用いてその造血初期発生における発現パターンを解析したところ、遠位プロモータによって制御されるAML1cアイソフォームはオートレギュレーションを受けて発現し成体型造血発生と関連していた。一方、近位プロモータから読み取られるAML1bアイソフォームは胚型造血と一致した発現パターンをとり、この両者は異なった発現制御を受けていた。 3.AML1-MTG8遺伝子を片方のAML1遺伝子座にノツクインさせたES細胞と、対照として、同じノックインベクターがランダムにインテグレーションしたES細胞とを用いて複数のキメラマウスを作成した。 4.多くのキメラマウスにおいて、AML1-MTG8ノックインES細胞クローンは末梢血に貢献していることがGPI解析で示されたものの、これらの細胞はキメラマウスの正常ライフスパン内では白血病化をほとんど生じなかった。 5.AML1-MTG8ノックインES細胞をもつキメラマウスに対して、白血病の化学誘発実験を施行中である。 次年度はこれらの検討を継続し、AML1-MTG8がどのような発現調節を受けるのか検討するとともに、この融合遺伝子による白血病発生過程の解析を行う予定である。
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[Publications] Fujita,Y.: "Identification of an alternatively spliced form of the mouse AML1/RUNX1 gene transcript AML1c, and its expression in early hematopoietic development."Biochemical and Biophysical Research Communications. (印刷中). (2001)
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[Publications] Okuda,T.: "Biological characteristics of the leukemia-associated transcriptional factor AML1 disclosed by hematopoietic rescue of AML1-deficient embryonic stem cells by using a knock-in strategy."Molecular and Cellular Biology. 20・1. 319-328 (2000)
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[Publications] 奥田司: "造血初期発生を制御する転写因子群とノックアウトマウス"血液フロンティア. (印刷中). (2001)
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[Publications] 奥田司: "AML1/RUNX1遺伝子の変異と白血病"日本小児血液学会雑誌. (印刷中). (2001)
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[Publications] 奥田司: "AML1による転写制御と白血病"血液フロンティア. 10・9. 1123-1135 (2000)
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[Publications] 奥田司: "AML1と白血病"血液腫瘍科. 40・1. 1-12 (2000)
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[Publications] 奥田司: "造血器腫瘍アトラス第3版(阿部達生・編)"日本醫事新報社(東京). 284 (2000)
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[Publications] Okuda,T.: "Role of AML1 in normal and leukemic hematopoiesis.In"Molecular Target for Hematological Malignancies and Cancer" (Ed.by Niho Y.)"Kyushu University Press (Fukuoka, Japan). 159 (2000)