2000 Fiscal Year Annual Research Report
糸球体疾患における糸球体上皮細胞の形質転換と各種転写因子発現についての研究
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12671019
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大高 徹也 東北大学, 医療技術短期大学部, 助教授 (70271921)
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Keywords | 巣状糸球体硬化症 / 糸球体上皮細胞 / 形質転換 / サイトケラチン / 転写因子 / 細胞周期調節蛋白 |
Research Abstract |
巣状糸球体硬化症の管外病変における、上皮細胞の形質転換を免疫組織学的に検討し、あわせて糸球体破壊の過程との関連を検討した。この目的で、巣状糸球体硬化症(FSGS)36例を対象に、腎生検標本の連続切片を用いた酵素抗体法により、各種cytokeratin(以下CK)及び各種転写因子(WT1、Pax2)と細胞周期調節蛋白(p21、p27)の発現を免疫組織学的に検討した。正常対照群として、腎生検上異常の見られない顕微鏡的血尿患者10例についても同様の検討を行った。 正常群糸球体上皮細胞の骨格蛋白発現に関しては、壁側上皮(Bowman嚢上皮(以下B上皮))の一部に各種CK発現が見られた。CK polypeptide別にその発現を見ると、B上皮に発現しているCKはCK8、CK18、CK19のみであった。また、各種転写因子発現に関しては、臓側上皮(足細胞(以下P上皮))にWT1、p27及びp21の発現が、またB上皮にはWT1、Pax2の発現が観察された。 FSGS 36例の検討では、正常係蹄の殆どではP上皮、B上皮のCK発現様式および転写因子発現様式は正常腎と同様であった。17例で、管外増殖巣が観察されたが、これに一致してCK8、CK18、CK19の発現とPax2の細胞核発現が見られた。また他の6例では、光顕上正常構造を呈する係蹄P細胞の一部にCK8、CK18、CK19の発現とPax2発現が見られた。これら合計23例で観察された異所性のCKおよびPax2発現は、いずれもWT1の減弱およびp27の消失を伴っていた。Pax2発現は、FSGS発症後の経過期間と負の相関を、また、尿蛋白量と正の相関を示した。以上より、FSGSの発症過程で、糸球体P上皮は、Pax2発現とCK発現及びWT1消失を伴う形質転換をきたし、糸球体硬化の先行病変として重要な管外増殖に到る過程で重要な役割を果たしているものと思われた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Ohtaka A: "Significance of early phenotypical change of podocyte as detected by Pax2 in primary focal segmental glomerulosclerosis(FSGS)"Journal of American Society of Nephrology. Vol.11. P549A-550A (2000)
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[Publications] 大高亮彦: "培養糸球体上皮細胞の形質に関与する転写因子WT1及びPax2の発現解析"日本腎臓学会誌. 42巻3号. 221-221 (2000)