2000 Fiscal Year Annual Research Report
甲状腺ホルモンによる甲状腺刺激ホルモン発現抑制機構の研究
Project/Area Number |
12671077
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
佐々木 茂和 浜松医科大学, 医学部, 助手 (20303547)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 浩淑 浜松医科大学, 医学部, 教授 (60164331)
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Keywords | 甲状腺ホルモン / 甲状腺ホルモン受容体 / 転写 / 甲状腺刺激ホルモン / ネガティブフィードバック |
Research Abstract |
甲状腺刺激ホルモン(TSH)に対する甲状腺ホルモン(T3)による転写抑制は下垂体-甲状腺系の中心的な制御機構であるがその機序は不明な点が多く、私達は以下のような検討を行っている。 1.私達はTSHα鎖、副甲状腺ホルモン(PTH)などでリガンド依存性の転写抑制に必要と報告されたのと共通のDNA配列がTSHβ鎖にも存在する可能性を見出している。この領域に結合する因子の存在をTSHβ産生細胞株(TαT1)細胞の核抽出液を用いたgel shift assayで確認した。さらに特異的oligo DNAを用いたgel shift assayで、これがhigh mobility group蛋白の中でも特にSoxと呼ばれるグループに属することを見い出した。この因子はT3結合したTRを転写活性化から抑制へと変換する機能が期待され、現在そのクローニングを行っている。 2.腎臓由来のCV1細胞を用いてTSHβ鎖の転写を再構成する実験系を確立し、機能的なTRのアイソフォームとしてTRα1、β1、β2を発現させてTSHβ鎖の転写制御を検討した。その結果、T3依存性転写抑制作用はTRβ2が最も強かった。なおいずれのアイソフォームのドミナントネガティブ変異体もTSHβへの抑制を阻害し、TRを介した制御であることを確認した。一方、これらアイソフォームを認識する特異抗体を用い、TαT1細胞の核蛋白のウエスタンブロットを行ったところ、TRβ2のみのバンドが検出された。従ってTSH遺伝子の制御ではTRβ2が質的にも量的にも最も重要であると示唆された。一般にT3によって転写が活性化される遺伝子では、T3非存在下では逆に標的遺伝子の転写を抑制する。しかしこの逆の現象がTSHβのようにT3で抑制される遺伝子で起こりうるか否かは不明である。前述のCV1細胞の系でTRの3つのアイソフォームを検討した結果、いずれにおいてもTSHβの抑制にはT3結合したTRの存在が必要であるが、T3非存在下ではTRによる転写活性化は認めなかった。このことからT3によるTSHの転写制御機構は活性化機構の単なる裏返しではないことが示唆された。
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