2001 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病の血管壁細胞におけるPDGF刺激によるp38活性亢進機序及び生物活性の解析
Project/Area Number |
12671097
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
五十嵐 雅彦 山形大学, 医学部, 助教授 (70272078)
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Keywords | p38 / PDGF-BB / 血管平滑筋細胞 / 糖尿病 / PKC / ROCK / アンチセンス / ラット |
Research Abstract |
【背景及び目的】我々は,糖尿病状態の血管平滑筋細胞(VSMC)ではplatelet-derived growth factor-BB(BB)刺激によりp38 mitogen-activated protein kinase(p38)活性が亢進し,細胞増殖やアラキドン酸遊離などに関与することを明らかにした.しかし,BB刺激に伴うp38の上流のシグナル伝達機構及び細胞遊走能については充分に解明できてはいなかった.そこで,今回BB刺激によるp38活性化に対するRho-associated kinase(ROCK)とprotein kinase C(PKC)の影響と下流の遊走能に対する効果について検討した. 【方法】正常(N)とSTZ 50mg/kg注射後6週間飼育した糖尿病(DM)の雄Sprague-Dawleyラット大動脈よりexplant法にてそれぞれVSMCを採取した.<1>VSMCをROCK阻害剤のY-27632(Y)とHA-107(HA),PKC阻害剤のGF109203X(GFX),PKCβII阻害剤の(CGP),PKCδ阻害剤のLotterilin(Lot),PKCδアンチセンス(δAS)で前処置後BBで刺激し,p38リン酸化をimmunoblot法で検討した.<2>VSMCをBBで刺激した後超遠心法にて細胞を膜分画と細胞質分画に分離し,immunoblot法でRho AとPKC isoformのtranslocationを検討した.<3>上記阻害剤とp38阻害剤のSB-203580(SB)でVSMCを前処理後BBで刺激し,Boyden-Chamber法により遊走能を検討した. 【結果】<1>BB刺激でリン酸化p38はNに比べDMで40%亢進しており,YとHA,両群とも影響を受けずGFXで濃度依存性に抑制された.さらに,CGPではわずかに抑制傾向が認められたが,むしろLotにより濃度依存性に抑制された.また,p38リン酸化はδAS添加でも抑制された.<2>膜と細胞質分画による検討では,NとDMにおいて共にBB刺激によりRho Aは変化しなかった.PKC isoformでは,無刺激でDMでβIIが膜分画で亢進していたがBB刺激では変化が見られなかった.むしろ,NとDM共に膜分画でδが亢進しておりDMでより増強が認められた.αとβIはいずれにおいても変化が見られなかった.<3>遊走能は,BB刺激でDMにおいてより亢進し,YとHA,CGPでは両群とも影響を受けなかったが,SBとGFX,LotではNとDMそれぞれで濃度依存性に抑制された.また,δAS添加でも遊走能は抑制された. 【結論】これらの検討により,VSMCにおいてBBによるp38活性化及び遊走能には,ROCKやPKCβIIは影響を及ぼさず,PKCδが関与していることが明らかにされた.さらに,PKCδはDMにおいて亢進しており,糖尿病による慢性的な炎症過程を伴う動脈硬化病変の形成に対して重要な影響を及ぼしていることが示唆された.
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[Publications] Yamaguchi H., <Igarashi M.>___-, et al.: "Platelet-derived growth factor BB-induced p38 mitogen-activated protein kinase activation causes cell gowth,but not apoptosis,in vascular smooth muscle cells"Endocrine Journal. 48. 433-442 (2001)
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[Publications] Yamaguchi H., <Igarashi M.>___-, et al.: "Characterization of platelet-derived growth factor-induced p38 mitogen-activated protein kinase activation in vascular smooth muscle cells"European Journal of Clinical Investigation. 31. 672-680 (2001)