2001 Fiscal Year Annual Research Report
血管石灰化の発症機序におけるリン代謝異常の役割に関する研究:動脈硬化病変におけるリン輸送体の意義
Project/Area Number |
12671122
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
奥野 泰久 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (80152429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城野 修一 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (60336790)
塩井 淳 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (90260801)
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Keywords | 血管石灰化 / アポトーシス / 血管平滑筋細胞 / メンケベルグの石灰化 / 慢性腎不全 / VEGF |
Research Abstract |
血管平滑筋細胞のアポトーシスが冠動脈などの動脈硬化巣に証明されることは以前より知られている。しかしアポトーシスによる血管平滑筋の細胞死と血管石灰化との関係については現在まで報告がない。そこで今回我々は慢性腎不全患者のシャント作成時の摘除血管を用いて石灰化病変(メンケベルグの中膜石灰化)とアポトーシスとの関係を免疫組織学的方法にて検討した。 (1)55名の透析前の患者からシャント作成時に得られた橈骨動脈をサンプルとした。患者の平均年齢は64歳で、男性が30名、女性が25名であった。腎不全の原因は糖尿病が23名、慢性糸球体腎炎が13名、高血圧が13名、その他が6名であった。 (2)組織標本はhematoxylin-eosin(H&E), Azan-Mallory, Elastica Van Giesonの各染色を行なった。カルシウム沈着はvon Kossa染色にて行ない、アポトーシスによる細胞死はTUNEL法にて同定した。種々の物質の局在は特異抗体を用いて免疫組織化学的に検討した。 (3)55名中8名にメンケベルグの中膜石灰化(MMS)を認めた。MMS病変は中膜の内側に島状に局在し、中膜平滑筋細胞に取り囲まれており、石灰化部分はvon Kossa染色陽性であった。MMS病変のすべてにTUNEL陽性細胞がみとめられたが、MMS病変のない組織ではTUNEL陽性細胞は証明されなかった。これらのTUNEL陽性細胞にはα-smooth muscle actinが認められ、平滑筋細胞と考えられた。アポトーシスを誘導するとされるBaxは8名中3名に認めた。このことからMMSとアポトーシスとの間には何らかの関係が存在することが示唆された。 (4)次に阻血など低酸素状態にて産生が増加するとされるVEGFの局在を検討した。VEGFはMMSのない標本には1例も検出されなかったのに比し、MMSを認める7例中5例においてMMS周辺の中膜平滑筋細胞にVEGFを証明した。このことは阻血状態がMMSの発症、進展に何らかの関わりがあることを示唆している。 以上の所見から動脈壁の阻血がアポトーシスを誘導し、その結果MMSが発症、進展する可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)