薬物による不飽和脂肪酸生合成制御の試み

2002 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 12671125
• Research Institution: Josai University
• Principal Investigator: 川嶋 洋一 城西大学, 薬学部, 教授 (80126515)
• Keywords: Δ9不飽和化酵素 / パルミトイルCoA炭素鎖伸長酵素 / デヒドロエピアンドロステロン / 脂肪酸酸化 / VLDL分泌

Research Abstract

我々はステロイドホルモンの一種であるデヒドトエピアンドロステロン(DHEA)がオレイン酸合成に関与するΔ9不飽和化酵素およびパルミトイルCoA炭素鎖伸長酵素を誘導することを明らかにしている。本年度はDHEAが不飽和脂肪酸、特にオレイン酸量の調節にどのように関わっているかについて検討を行った。DHEAを投与するとin vivoにおけるステアリン酸からオレイン酸への変換が顕著に亢進した。このことは誘導されたオレイン酸合成酵素が実際に機能していることを示すものである。一方、DHEAは脂肪酸の分解に関与する酵素群を誘導することも知られている。DHEAを投与したラットの肝ホモジネートにおける脂肪酸の酸化速度を検討したところ、ミトコンドリアおよびペルオキシソームにおける酸化速度が上昇していた。しかし、DHEAを投与したラット肝から調製した初代培養肝細胞を用いたところ、ミトコンドリアにおける脂肪酸の酸化速度は上昇していたが、ペルオキシソームではほとんど変化が認められなかった。本投与条件においてはペルオキシソームの脂肪酸β酸化酵素は顕著に誘導されている。これらの事実から、酵素が誘導されていても必ずしも生体内で機能していない可能性が示唆された。肝臓における脂肪酸の収支を調べるためにVLDLの分泌速度を調べたところ、DHEAを投与することによって顕著な分泌低下が認められた。以上の結果から、DHEAはラット肝臓において、オレイン酸の合成速度を上昇させる一方、ミトコンドリアでの酸化を亢進させ、また、VLDLの分泌を促進し、これらの総合的な結果として、肝臓におけるオレイン酸の量を増加させるものと考えられた。

Research Products

• [Publications] Imai, K., Kudo, N., Koyama, M., Kawashima, Y.: "Effects of dehydroepiandrosterone on oleic acid accumulation in the liver of rats"Biochem. Pharmacol.. (in press). (2003)