2001 Fiscal Year Annual Research Report
外科的モデルを用いた膵、特にβ細胞再生の機序に関する研究
Project/Area Number |
12671158
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
角 昭一郎 島根医科大学, 医学部, 講師 (80252906)
|
Keywords | 膵再生 / 膵管結紮 / 膵切除 / 膵外分泌不全 / パンクレアチン / インスリン / PDX-1 / in situ hybridization |
Research Abstract |
ラット膵再生には切除後の膵外分泌不全により分泌が亢進する消化管ホルモン(CCKやGLP-1など)の関与が想定されるが、CCK受容体ノックアウトマウスでも膵は著変なく形成される。一方、膵管狭窄や膵炎など膵の病的変化はreg蛋白や各種サイトカイン産生を誘導し、再生機転を活性化する。従って、膵再生は腸管と膵自体からの因子が関与する可能性があるが、その相互作用や、直接的に膵再生を惹起する因子は不明である。本研究では外科的モデルを駆使して、ラット膵再生を惹起する因子を探求した。 9週令雄性Wistar系ラットに、以下の方法で65%あるいは80%の膵切除(Px)、膵管結紮(Lig)またはSham手術を施行した。 65%Pxまたは65%Lig:膵を門脈前方で結紮離断して胃葉・脾葉を切除(Px)または残置(Lig)した。 65%Sham:同部位の剥離のみ。 80%Pxまたは80%Lig:胃葉・脾葉および十二指腸乳頭から肛門側の十二指腸葉を結紮離断して切除(Px)または残置(Lig)した。 80%Sham:同部位の剥離のみ。 各手術群を通常の粉末飼料(N群)またはこれに30分の1のパンクレアチンを添加(P群)して飼育し、術後8日目に、また、80%群では21日目にも、ラットを犠死せしめた。残膵相当部分の湿重量を測定し、組織学的検討を行った。膵湿重量は体重で補正し、N・P両群を合わせた各Sham群の平均値に対する百分率で再生率を評価したところ、8日目には65%、80%ともにPxおよびLig群で有意に増大したが(Px/Lig/Shamの再生率は65%・N群で29±7/14±10/4±6、80%・N群で24±4/35±13/5±5%)、'飼料の影響は無かった。一方、21日目(80%のみ)のPx/Lig/Shamの再生率は、N群で54±8/11±8/-13±4%とPx群でのみ有意に増大し、飼料の影響は無かった。また、組織をインスリンの免疫染色とPDX-1のin situ hybridizationで比較検討したところ、残膵部分のインスリン、PDX-1発現は各群間に著明な差異が無く。Lig群の結紮葉では膵管上皮にPDX-1が瀰漫性に発現し、一部にイシスリン陽性細胞が見られた。(数値は平均±SE。ANOVAにてp<0.05で有意。残膵部分の全膵重量に対する割合は、65%Sham群で36.4±1.2%、80%Sham群で19.6±0,7%であった。) この結果から、本実験におけるパンクレアチン添加の影響はわずかで、膵再生に対する膵外分泌不全の関与は少ないことが示唆された。一方、8日目と21日目の結果が明らかに異なることは非常に興味深い結果であり、この差が膵切除後の膵再生機序を解明する大きな手がかりとなることが期待される。この点に関しては現在なお検討を重ねているところである。
|