2000 Fiscal Year Annual Research Report
膵臓癌における肝転移機構の解析-癌細胞解離因子の単離精製と遺伝子クローニング
Project/Area Number |
12671236
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
江上 寛 熊本大学, 医学部・外科学第二講座, 助教授 (00264284)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 道雄 熊本大学, 医学部, 教授 (30028691)
|
Keywords | 膵臓癌 / 浸潤 / 転移 / 癌細胞解離因子 |
Research Abstract |
私たちは、BOP誘導ハムスター実験膵臓癌の同一腫瘍組織から、高率に肝転移をおこす高転移株、膵組織内に腫瘍を形成するが肝転移の少ない低転移株の二つの細胞株を樹立し、高転移株培養上清中に低転移株の細胞コロニーを解離させる因子(癌細胞解離因子;DF)が存在することを見出した。本年度はDFの本態の解明と膵癌の浸潤・転移機構の関連を明らかにすることを目的に研究を進めた。部分精製したDFを免疫原として作製したDFの中和抗体を用いてWestem blottingを行った結果、現在までのところ分子量約55K前後に2本のmajor bandが検出された。この2本のbandについて微量アミノ酸解析の基礎実験を行った結果、これらの蛋白はムチン様構造を有するIgG Fc binding proteinあるいは新しいタイプのmetalloproteaseと高いhomologyを示した。さらに、RDA(representational difference analysis)法を用いて浸潤・転移性の異なる両細胞株におけるmRNA発現の違いを検討した。その結果、これまでに細胞の解離、遊走、浸潤能の刺激伝達経路に関わる可能性があるMKK2、PI4Kの二つの因子が単離検出された。さらにoncogeneの解析の結果、DFによる細胞遊走能の増強にc-fosの発現が関与し、この細胞遊走能の増強はc-fos antisense oligonucleotidによって優位に抑制されることが明らかとなった。これらの結果は、DFが癌細胞の細胞解離、遊走、浸潤能の刺激伝達系路に深く関わっていることを示唆しており、膵臓癌の浸潤転移機構の初期段階と密接に関連すると考えられる。DFの本態とその刺激伝達系路の解明は、その制御による膵臓癌の浸潤転移の予防法の開発に寄与できるものであると考えている。
|
Research Products
(2 results)