2001 Fiscal Year Annual Research Report
内軟骨骨化での軟骨細胞に対する腫瘍壊死因子(TNF)の働き
Project/Area Number |
12671391
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
相澤 俊峰 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (50282132)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大沼 正宏 東北大学, 医学部・附属病院, 医員
川又 朋麿 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (70333804)
|
Keywords | 骨折治癒 / 内軟骨骨化 / アポトーシス / 軟骨細胞 / 腫瘍壊死因子 |
Research Abstract |
長管骨の伸長を司る成長軟骨板や、骨折治癒過程では内軟骨骨化がみられる。この骨化過程において軟骨細胞は増殖、成熟、肥大、そしてプログラム細胞死=アポトーシス細胞という連続した変化を示す。プログラム細胞死を惹起する因子はdeath factorと呼ばれ、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーに属するTNF-α、Fasリガンド、TRAILや酸化窒素(NO)などが知られる。本研究では骨折治癒過程におけるTNFの働きを、この軟骨細胞に対するアポトーシスの観点から捉えるとともに、他のdeath factorについても発現を観察した。 BALB/Cマウスの脛骨の横骨折モデルを用いた。術後1、2、3週でマウスを安楽死させ、RNase protection assay(RPA)で仮骨中のcaspase-8、TNF-αとその受容体であるp55、FasリガンドとFas受容体、TRAILのmRNAを同定した。また、これらの蛋白の発現を免疫染色により検討した。ボストン大学から提供されたTNF-α受容体のノックアウトマウス(TNF-α-KO)でも同様に骨折モデルを作製し、RPAで仮骨中のcaspase-8の発現を観察した。 BALB/Cマウスでは骨折後1週て骨折部付近では内軟骨骨化により作られた軟骨仮骨が骨折部を架橋していた。骨折後2週では軟骨細胞や軟骨性仮骨はまだ確認できたが、骨折後3週で骨折部はprimary spongiosaにより完全に癒合された。一方、TNF-α-KOでは、骨折後2週、3週で骨折仮骨が大量に残存し、骨折治癒過程が遅れる傾向にあった。 RPAでは、BALB/Cマウスでcaspase-8、TNF-αとp55、Fasリガンドと受容体、TRAILの発現が各群で認められた。これらの抗体を用いた免疫染色では、主に軟骨細胞で発現が認められた。またp55^+p75^+マウスではcaspase-8のmRNAがほとんど同定できなかった。 本研究から骨折治癒過程にある軟骨細胞では、少なくとも3種類の異なったdeath factor、TNF-α、Fasリガンド、TRAILが発現していた。軟骨仮骨が新生骨に変わるためには、軟骨細胞が除去されなければならない。この過程において軟骨細胞はこれらのdeath factorを発現し、オートクリン/パラクリン機序で"自殺"する可能性が考えられる。TNF-α受容体ノックアウトマウスでcaspase-8がほとんど発現していなかったことから、中でもTNF-αがその中心的な役割を担っている可能性が示唆された。
|