Research Abstract |
頸椎疾患では,手術前より求心性・遠心性の心臓交感神経系への障害があり,手術により障害悪化の可能性が考えられる.頸椎手術患者の頸椎固定手術で周術期の心拍変動から,その回復過程を検討した. 【方法】頸椎除圧固定術を行なった患者10例を対象とした.そのうち,頚椎症5名,後縦靭帯骨化症5名であった.記録はアクティブトレーサ(AC300,GMS社)を用い,手術2日前,術後1,3,7日目のRR間隔を24時間連続測定し,memcalc解析装置(Chiram, Suwa trast社)で周波数解析を行なった.得られた心拍変動のパワーをLF(0.04-0.15Hz),HF(0.15-0.40Hz)に分け,その比も算出した.結果はmean±SDで表した. 【結果】手術前,手術1,3,7日目のLFは,375±231,424±406,144±147,368±313,HFは,110±92,208±135,95±80,140±161であった.LF, HFは手術前に比べ,1,3日目に低下を示すもの,上昇を示すものがあり,優位の変化を示さないかった.第7日目には,LF, HFのパワーが手術前の値に回復する例も見られたがその傾向は一定でなかった.LF, HFの日内変動は、手術7日目には回復傾向を示した. 【考察・結語】頸椎疾患では,心臓交感神経系の障害は症例によりその程度は異なる.さらに,頸椎への手術が,心拍変動に何らかの影響をおよぼし,手術からの回復過程に一定の傾向を示さなかったと考えられる.日ないリズムに関しては,7日目にはほとんどの症例が回復した.これは,心・大動脈血管手術に比べ手術侵襲が少なかったものと考えられる. 同様の測定方法で,外傷性脊椎損傷患者5名で脊椎固定術後の回復過程を心拍変動解析により検討した.心拍の測定は,手術後第1,3,7病日とした.全症例とも,手術後麻痺の悪化は認められなかった.手術後,心拍変動がノコギリ状の特異なパターン(ramp wave,悪化症例)を示した症例はなかった.LF、HFパワーは,頸椎固定手術後増加傾向を示したもの変化しないものがあった.心拍の日内変動は,予定手術患者と同様に手術後7日目には,日内リズムが確認できた.麻痺の進行のない頸椎損傷患者では、早期の頸椎固定手術の有効性が,心拍変動解析により確認できた.
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