2001 Fiscal Year Annual Research Report
中耳含気腔内の粘膜換気状態と中耳炎症病態予後との関係、臨床的、動物実験学的研究
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12671683
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
青木 和博 東京慈恵会医科大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助教授 (10130139)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
歌橋 弘哉 東京慈恵会医科大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助手 (60287208)
濱田 幸雄 東京慈恵会医科大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助手 (60277069)
辻 富彦 東京慈恵会医科大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助手 (30236880)
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Keywords | 組織血液量 / 血瘤速度 / 耳粘膜病変 / 粘膜ガス交換能 / 中耳腔全圧 / 二酸化炭素 / 酸素 / 中耳炎症病態 |
Research Abstract |
粘膜の炎症性変化について検討するとき、急性炎症期の粘膜の発赤状態は粘膜内の血流が増加した結果と考えられている。しかし過去の人中耳腔全圧を測定した臨床実験結果より、粘膜内の血流低下を示唆する結果が得られていた。そこで、今回中耳炎症病態における経時的な中耳粘膜血流動態と中耳腔全圧の変化について検討した。 1)動物実験的研究 (1)方法:正常成熟家兎の耳管咽頭口よりインフルエンザ死菌を注入、さらに同口をラミナリアで閉塞し、一定期間放置して実験的中耳炎モデルを作製した。その後、経鼓膜的にレーザー血流計を挿入して中耳粘膜の血流量を測定し、同時に圧測定用チューブを外耳道に留置し、中耳腔全圧を測定した。 (2)結果:中耳炎群では全例とも粘膜の発赤状態を認めた。これらの粘膜の発赤を伴った中耳炎群では、未処置群と比較して中耳粘膜の血流量減少と中耳腔全圧低下が有意に認められた。処置後2日目までは血流量、中耳腔全圧は低下し、それ以後はともに上昇を認めた。すなわち中耳粘膜の発赤状態の消失に伴って血流量は増加し、中耳腔全圧が上昇した。 2)臨床研究 (1)方法:小児滲出性中耳炎例で換気チューブを留置した後、処置後6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月の時点で外耳道を密閉して中耳腔全圧の変化を計測した。 (2)結果:中耳腔全圧はチューブ留置後12ヶ月を経過すると上昇傾向を認め、18ヶ月以上で有意に増加した。すなわち、チューブ留置直後の滲出性中耳炎による粘膜の発赤した状態では血流量の低下に伴って全圧は低い傾向を示したが、粘膜の炎症状態の改善(発赤状態の消失)にともなって粘膜内の血流が増加し、その結果、全圧が増加したと考えられた。 動物実験の結果と踏まえて、中耳腔全圧の測定は、中耳腔内の粘膜の炎症状態を探る有用な方法であることが判明した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 青木和博: "真珠腫手術におけるEBM-中耳真珠腫例で耳小骨の再利用は可能か"JOHNS. 17-7. 1019-1022 (2001)
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[Publications] 青木和博: "高齢者に対する鼓室形成術"耳鼻と臨床. 47-4. 315-319 (2001)
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[Publications] 青木和博: "介達性鼓膜裂傷"ENTONI. 5. 6-8 (2001)
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[Publications] 辻 富彦: "鼓膜癒着症の成因に関する研究"耳鼻咽喉科展望. 44-5. 326-344 (2001)