2000 Fiscal Year Annual Research Report
難治性ぶどう膜炎の発症機構と治療に関する細胞生物学的研究
Project/Area Number |
12671716
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
中村 聡 横浜市立大学, 医学部, 講師 (00237398)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 重昭 北海道大学, 大学院・医学研究科・病態制御学専攻・感覚器病学講座・視覚器病学分野, 教授 (50002382)
|
Keywords | ベーチェット病 / TNF-alpha / 抗TNF-alpha抗体 / ぶどう膜炎 / apoptosis |
Research Abstract |
平成12年度はベーチェット病患者の遷延性炎症病態の解析と抗TNF-alpha抗体治療をおこなった.使用した抗体はヒト-マウスキメラ型モノクローナル抗体infliximabで,網膜ぶどう膜炎を有するベーチェット病患者でシクロスポリン治療の効果が不十分,あるいは副作用により投与が不可能になった症例を対象とした.投与量は1回あたり5mg/kgを0週,2週,6週,10週の4回点滴静注し,臨床症状により判定する有効性と副作用について検討した.また期間中,投与前,投与後1週,4週の時点で末梢血よりリンパ球を分離しTNF-alpha,IIFN-garnma,L-4のサイトカインmRNAおよびCaspase8の測定,細胞内サイトカイン染色によるTh1/Th2比の解析をおこなった.ぶどう膜炎の発作は投与開始後に軽快し,霧視などの眼科的自覚症状,あるいは口内炎などの全身症状も著しく改善した.一方副作用については投与を中止する必要のあった重篤な例はなかったが,抗ds-DNA抗体の上昇がみられた.また,試験後全例ぶどう膜炎の発作を再発するようになった.サイトカイン等の測定結果は現在解析中である.以上の結果より本薬物のベーチェット病のぶとう膜炎に対する有効性は強く期待できる.しかし免疫系に与える影響の広がりについては十分確認されていない.このため今後の注意深い経過観察が必要と思われる.また本抗体の効果は2か月程度持続し,その後炎症病態は再活性化するものと考えられる.薬物の体内の半減期は151-246時間とされている.しかし炎症の抑制効果はこの期間を越えてみられたことから本病の炎症病態の形成は単一のサイトカイン,あるいは特定の細胞によるものではなく,複数のサイトカインや免疫応答細胞による相互作用と増強効果の結果と思われるものの,TNF-alphaがその中心に近い役割を担っているものと推測される
|
-
[Publications] Shao H,Woon MD,Nakamura S,Sohn JH,Morton PA,Arbuckle JA,Bora NS,Kaplan HJ: "CTLA4+FC inhibits the induction and severity of experimental acute anterior uveitis (EAAU)"Invest Ophthalmol Vis Sci. 41. 107 (2000)
-
[Publications] Kadonosono K,Itoh N,Uchio E,Nakamura S,Ohno S: "Staining of internal limiting membrane in macular hole surgery"Arch Ophthalmol. 118. 1116-8 (2000)
-
[Publications] 中村聡,大野重昭: "ベーチェット病の眼病変に対する抗TNF-αモノクローナル抗体療法"炎症と免疫. 9. 205-209 (2001)
-
[Publications] 中村聡: "ぶどう膜炎の新しい病因と治療(ベーチェット病)"Ophthalmology Times JAPAN. 3. 60-61 (2000)
-
[Publications] 中村聡: "難治性ぶどう膜炎・難治白内障手術のレスキュー"メジカルビュー社. 269 (2001)