2000 Fiscal Year Annual Research Report
各種緑内障治療薬が毛様動脈血管平滑筋に与える効果についての薬理学的研究
Project/Area Number |
12671719
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
吉富 健志 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教授 (60191623)
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Keywords | 眼循環 / 毛様動脈 / 緑内障治療薬 / 当尺性収縮記録法 / 非コリン非アドレナリン神経支配 / 一酸化窒素(NO) / 血管平滑筋 / 正常眼圧緑内障 |
Research Abstract |
緑内障性視神経障害の進行にとって眼圧が最も重要なrisk factorである。しかし正常眼圧緑内障などのように眼圧が低いにも関わらず視神経障害が進行するような病態では、眼圧以外の因子、とりわけ眼循環が重要であると考えられる。我々は、新しい緑内障治療薬が眼圧下降効果の他に血管平滑筋にどのような作用を持っているかを検討した。ウサギより毛様動脈を摘出し、等尺性収縮記録法を用いて血管の性質と薬物の作用をin vitroで検討した。この血管はフェニレフリンのようなα作動薬に対して濃度依存性の収縮を示したが、イソプロテレノールのようなβ作動薬には反応せず、β受容体はこの血管に関する限り重要な役割を果たしていないと考えられた。またフェニレフリンによる収縮はα1受容体拮抗薬であるブナゾシンによって抑制された。神経刺激を行うとこの血管の神経支配には収縮性の成分と弛緩性の成分があることがわかった。前者は交感神経α受容体を介するもので、後者はNO合成阻害薬で抑制されたが、内皮には非依存性であり、非アドレナリン非コリン性のNOを伝達物質とする神経によって起こっていると考えられた。緑内障治療薬の一種であるピロカルピンはこの血管の内皮細胞に存在するムスカリン受容体を介して内皮依存性のNOを放出させることによって濃度依存性の弛緩を起こすことが明らかとなった。β遮断薬はベタキソロール、チモロール、カルテオロールで検討を行った。ベタキソロール、チモロールは比較的高濃度でこの血管を弛緩させたが、その機序はβ遮断作用ではなく、これらの薬剤の持つCa拮抗薬様作用が考えられた。カルテオロールの血管弛緩作用は確認できなかったが、in vivoでは血流を増加させるとの報告もあり、さらに検討を有する。また最近新しい緑内障治療薬として注目されるウノプロストンおよびラタノプロストもやはり濃度依存性の弛緩を起こしたが、弛緩は内皮非依存性で、Ca拮抗薬様作用とも異なり、内因性のCGRPやPGの関与もなく、作用機序に関しては不明であった。 このように既存の緑内障治療薬のほとんどは血管弛緩作用を持つが、その作用機序は異なっていることが明らかとなった。この結果は正常眼圧緑内障の治療約選択に際して臨床的に非常に重要な示唆を与える物と考えられる。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Yoshitomi T: "Circadian rhythm of intraocular pressure"Asian Med J. 43. 222-227 (2000)
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[Publications] Yoshitomi T,Ishikawa H and Hayashi E: "Pharmacological effects of pilocarpine on rabbit ciliary artery"Curr Eye Res. 20. 254-259 (2000)
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[Publications] Ishikawa H,Mitsui Y,Yoshitomi T et.al: "Presynaptic effects of botulinum toxin type A on the neuronally evoked response of albino and pigmented rabbit iris sphincter and dilator muscles"Jpn J Ophthalmol. 44. 106-109 (2000)
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[Publications] Hayashi E,Yoshitomi T,Ishikawa H,Hayashi R and Shimizu K: "Effects of isopropyl unoprostone in rabbit ciliary artery"Jpn J Ophthalmol. 44. 214-220 (2000)
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[Publications] Yoshitomi T,Matui T,Tanakadate A,and Ishikawa S: "Comparison of threshold visual perimetry and objective pupil perimetry in clinical patients"J Neuro-Ophthalmol. 19. 89-99 (1999)
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[Publications] Hayashi-Morimoto R,Yoshitomi T,Ishikawa H,Hayashi E and Sato Y: "Effect of βantagonists on mechanical properties in rabbit ciliary artery"Graefe's Arch Clin Exp Ophthalmol. 237. 661-667 (1999)
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[Publications] 吉富健志: "正常眼圧緑内障「鑑別診断」"編集 新家眞、谷原秀信 金原出版. 49-56 (2000)
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[Publications] 吉富健志: "眼科診療プラクティス62「眼科手術と麻酔」(眼と神経支配)"編集 大鹿哲郎 文光堂. 74-77 (2000)