2000 Fiscal Year Annual Research Report
味細胞における肥満抑制物質レプチンによる甘味応答抑制の分子機構に関する研究
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12671801
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
杉本 久美子 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 講師 (10133109)
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Keywords | 味細胞 / 味神経 / 甘味応答 / レプチン / カリウムコンダクタンス / 糖尿病モデルマウス |
Research Abstract |
レプチンは肥満の病因遺伝子(ob-gene)にコードされる蛋白質で、全身の脂肪細胞から血液中に分泌されて視床下部に作用し、強力な摂食抑制作用を発揮する。末梢器官でも、肺、腎臓、膵臓、骨格筋などでレプチン受容体が見出されているが、感覚器でのレプチン受容体の存在は全く知られていなかった。糖尿病モデルdbマウスは正常マウスに比べて甘味に対しより高い感受性を示すことが以前より知られていたが、dbマウスはレプチン受容体に変異を持ち、レプチン受容後の細胞内情報伝達が行われないことが明らかにされるに至って、レプチンと味覚との関連性がクローズアップされた。 そこで、レプチンが正常非肥満マウスの味覚応答に影響を及ぼすか否かについて検討した。まず、血漿レプチン濃度を上昇させたときの味神経応答の変化を調べた結果、甘味に対する味神経応答のみが選択的に抑制された。このことは、レプチンが甘味応答性味細胞に選択的に作用する可能性を示唆する。次いで、レプチンが味細胞の電気的活動にどのような影響を与えるかについてwhole-cellパッチクランプ法等を用いて検索した。その結果、レプチンは約16%の味細胞においてK^+チャネルを活性化し、静止膜電位を過分極させることが判明した。一方、dbマウスではこのレプチンの作用は全く観察されなかった。レプチンによってK^+コンダクタンスの増大が起こる味細胞が、実際に甘味刺激に対し応答するか否かをサッカリン刺激を用いて検討した。その結果、レプチンによってK^+コンダクタンス増大を生じた味細胞のほとんど全てが、サッカリンに対してK^+コンダクタンスの減少を誘発した。この応答を膜電位変化でみると、サッカリンが脱分極を生じるのに対し、レプチンは逆に過分極を生じ、サッカリンによる脱分極を減弱させる作用を示した。 以上の結果から、正常マウスではレプチン受容体を有する味細胞は甘味刺激に応答し、レプチンの血中濃度が高まると、甘味刺激に対する脱分極応答が減弱されることが判明した。一方、dbマウス味細胞では、正常なレプチン受容体欠損のため甘味応答の抑制性調節が働かないと推測された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Kawai K,Sugimoto K,Nakashima K,Miura H and Ninomiya Y: "Leptin as a modulator of sweet taste sensitivities in mice."Proceeding of the National Academy of Sciences of the United States of America. 97・20. 11044-11049 (2000)
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[Publications] 杉本久美子,河合桐男: "肥満抑制物質レプチンによる味覚応答調節機構"口腔病学会雑誌. 67・4. 343 (2000)
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[Publications] 杉本久美子,二ノ宮裕三: "レプチンと味覚"日本味と匂学会誌. 8・1(in press). (2001)
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[Publications] Sugimoto K,Nakashima K,Yasumatsu K,Sasamoto K and Ninomiya Y: "Glutamate transduction mechanism in mouse taste cells."Sensory Neuron. (in press). (2001)
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[Publications] 杉本久美子(分担執筆): "はじめて学ぶ歯科口腔介護"医歯薬出版. 325 (2000)