Research Abstract |
人口構成の高齢化に伴い骨粗鬆症患者に有床義歯補綴を行う機会の増加が予測されることから,近年,骨粗鬆症患者の口腔内残存組織の保全ならびに咀嚼機能の回復に関連した情報が必要とされている.そこで本研究は,骨粗鬆症発症ラットを対象として,義歯床を介して加えられる持続的圧力によって義歯床下組織に惹起される病理組織学的変化を,AgNOR数を指標とした粘膜上皮活性動態とともに把握し,さらに持続的圧力の経時的変化との関連において検討することを目的とした. 実験動物には,卵巣摘出および低カルシウム食飼育によって骨粗鬆症を発症させた19週齢のウイスター系雌性ラット196匹(義歯装着被覆群1群,義歯装着加圧群3群および義歯非装着群1群)および無処置のまま経過させた健常対照群35匹を用いた.義歯装着被覆群には,義歯床下粘膜と無圧の状態で接触する義歯床を,義歯装着加圧群には,義歯床下組織に対してそれぞれ0.5,1.5および3.4kPaの持続的圧力を加える義歯床を,臼歯部口蓋に対して装着した.義歯非装着群は無処置のまま経過させた.義歯床装着3日,1,2,4,8,12および20週後に各実験群の5匹ずつから口蓋組織を採取し,以下の処理を行った:(1)ヘマトキシリン-エオジン染色用として,10%中性緩衝ホルマリンを用いて固定後,脱灰およびパラフィン包埋し,第一臼歯部を対象として前頭的な4μmの切片を作成した.(2)AgNOR染色用として口蓋粘膜のみを剥離し,4℃の4%パラホルムアルデヒドを用いて固定後,パラフィン包埋し,2μmの前頭的な切片を作成した.また,骨粗鬆症義歯装着加圧群3群の残る7匹ずつを対象として,義歯床装着時,義歯床装着の3日後および1週後以降1週毎に20週後まで,自作の荷重変換器を用いて持続的圧力を測定した. 現在,組織処理および持続的圧力の測定を続けている最中であり,病理組織学的観察ならびに粘膜上皮活性動態に関する定量的検討を行うための準備中である.
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