Research Abstract |
本学歯学部教職員6名を被験者として,嚥下時の舌および喉頭の動きを現有の汎用超音波診断装置,探触子,カプラー,心音マイクを用いて観察,記録した.この際に,嚥下させる試験食品としては,当講座で考案した摂取可能食品アンケート表で採用されている35品目の食品群である. 被験者に3gの各種食品を自由咀嚼させ,嚥下域に達した時点で形成された食塊を回収した.回収された食塊のテクスチャーを今回購入したレオメータにて解析し,食塊の物性を評価した.なお,咀嚼前の35品目のテクスチャーも合わせて測定した.さらに,嚥下機能評価のコントロールとして寒天を用いて硬度,粘度を調整した試料を用いた.なお,嚥下機能は,食塊の送り出し時点と嚥下第一音との関係から評価を行う平井らの方法に準じて行った. 咀嚼前の35品目の物性として,硬さ応力は3.7〜63.7Mpa,凝集性は0.06〜0.53,付着性は7.8〜380.7J/m-3のレンジで分布していた.摂取可能食品アンケート表で提示されている5群の食品群毎に平均値を比較すると,摂取難易度が低いI群からV群に向かって,硬さ応力は増加,付着性は減少し,凝集性については一定の傾向は認められなかった.一方,咀嚼後の嚥下域に達した食塊においては,硬さ応力:3.7〜20.3Mpa,凝集性:0.06〜0.50,付着性:7.8〜1615.7J/m-3であった.群間毎の比較では,摂取難易度が低いI群からV群に向かって,硬さ応力は増加していたが,付着性,凝集性ともに一定の傾向は認められなかった. 以上の結果から,嚥下域に達した食品の食塊は,咀嚼前の物性に関係なく,近似した凝集性を有することが示された.すなわち,嚥下運動開始判断の指標は凝集性であり,適切な食塊の形成には,咀嚼機能が重要な役割を担っていると考えられる.
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